ふらっと木曽が作られたいきさつ
ーー以前、取材でふらっと木曽に来た時に、すごく充実した施設でビックリしました。近くには立派な図書館もありますし・・・でも、何でこの場所にこうした施設を作ったのか? という素朴な疑問もあって・・・
坂下:もともとこのあたりは、旧中山道沿いに発展した商店街です。今、ふらっと木曽がある場所にも、もともとは大きなお店があったのですが空き店舗になっていました。でも、町の中心地ともいえる場所に、空き店舗があるのは良くないということで町が買い取ったそうです。
図書館がある場所には、町の役場があったのですが今は駅の近くに移転しました。そんなこともあって、町のバランスが変わってしまった。なので、 商店街の活性化という意味もあって図書館を建てたり、この場所の利活用を模索したそうです。
西尾:人の流れを変えたいという意図も、この施設が作られた一因だと思います。 行政と町民の間で、私たちが木曽町に来る前に「ここをどういう施設にすればいいのか?」という話し合いが何度も持たれたそうです。
坂下:いろいろなアイデアがあったそうなのですが、「テレワークという活用方法があるらしい」という意見が出て、最終的には地域おこし協力隊の人達に入ってもらって・・・つまり私たちのことなのですが(笑)、ITを活用した施設にすることに決まったそうです。
ーーちなみに、この施設での平均的な1日の過ごし方ってどんな感じなんですか?
西尾:特にイベントなどがなければ、事務作業や来客対応をしている感じですね。
坂下:見学者が多いのでその対応もします。観光客の方も来ますが、この施設に興味を持ってわざわざ訪ねてくる方もいらっしゃいます。
ーーコワーキングスペースというと、これから起業する人たちが利用するというイメージなのですが、現状ではどんな利用者が多いのでしょう?
坂下:コワーキングスペースとして利用する人はまだ少ないですね。現状では、この場所で開催されるイベントに来てもらって、参加者同士で交流してもらうという感じです。
もちろんコワーキング施設としての利用も促進していかなければならないとは思いますが・・・いい感じの交流も生まれてきています。でも、まだまだ起業というような流れは少ないと思います。
ーー以前、駆除した害獣の皮を利用して革製品を作るというビジネスを立ち上げようとしている方を、ここで取材させて頂きましたが・・・まだまだ、少数派ということなんですね。
レザークラフト作家でハンター!?長野県木曽町で害獣をあますことなく再利用するビジネスの始動中山間地域でのこれからの生き方や働き方を考えるイベント
ーー現在、「さとくらしカレッジ(※)」というイベントを開催されていますが、約3ヶ月間・8回に渡って多彩な講師を迎えるという内容にはどんな思いや意図があるのでしょう?
坂下:長野県には山間地にたくさんの町や村があります。いわゆる中山間地域ですが、過疎化が問題となっている反面、豊かな自然環境を求めて移住してくる人たちもたくさんいます。
講師の方のお話を聞きながら、みんなでこれからの中山間地域での生き方を考えることができればということでイベントを企画をしました。
西尾:講師を決めるにあたっては、長野県の地域ディレクターの方に協力してもらいながら、運営スタッフで決めました。たぶん私たちだけでは、いきなりこういう大きなイベントはできなかったと思います。
坂下:木曽地域に関わるキーワードを8つほど出して、 そのキーワードに関連する実践者の方を探してお声かけするという感じではじめました。なので、結果的に「中山間地域でどう生きていくか?」というような内容が多くなったと思います。
ーー昔は中山間地域の暮らしはとても便利だったといわれています。近くの山で煮炊きの燃料である薪を得ることができ、すぐ近くに畑があって食料も調達しやすかった。でも、現在ではそうした暮らしはほとんど失われて、都市で働き生活する人が圧倒的になりました。結果、中山間地域に住むことができるのは、その地で自活できる能力を持つ人に限られてきているという現状もありますよね?
坂下:そうだと思います。だから、私自身が中山間地域での生き方を学びたいということでもあるんです。なので、このイベントはとてもおもしろいです(笑)
西尾:私は木曽町の出身ですが、地元のことをよく知らなかったということに気がつきました。でも、東京から戻ってくることで新しく発見したこともたくさんあって、「なかなかおもしろい町だな」とも思うようになりました。こういう感覚が、地域の人たちにも伝わるといいなと思います。
自分たちの町のおもしろいところ=魅力を情報として発信して、都会に出て行った地元の人が1人でも2人でも戻ってくるきっかけになればいいなと思います。 やっぱり、生まれた場所が元気をなくしていってしまうのは悲しいという気持ちもありますしね。
ーー外部の視点というか、よそ者的な視点がないと、なかなか自分たちを客観視することはできないですよね。
坂下:だから、地域の中にあるものだけを見つめるのではなく、 外からの評価も絶対に必要だと思うんです。イベントを作っていく際には、その2つの視点を入れた方がいいと思っています。
つまり自分たちが、「木曽でもこんなことがあったらいいな」と思ってることについては、地域外の講師を呼んで学ぶ。そして、地域の人たちと自分たちの暮らす場所についてより深く学んでいくという2本立てですね。