「四畳半という間取りは、かつての日本人の暮らしの中で居住空間としては最小の単位だったと思うんです」
このように語るのは、長野県下諏訪町在住の一級建築士、宮澤正輝(みやざわ・まさてる)さん。1970(昭和45)年生まれの47歳だ。宮澤さんは次のように続ける。
「四畳半は、そこで寝ようと思えば寝ることができるし、何か作業しようと思えば作業もできる最低限の大きさなんです」
「このことからも、暮らしの中において“基準となる単位”なのではないか? と思っているんです。だから、もう一度自分自身の生活も含めて四畳半という空間を再評価してみたい」という思いを持ったという。
そして宮澤さんは、2015(平成27)年に下諏訪町に移り住み、2017(平成29)年に建築設計事務所「Layer Architects」と、生活雑貨をメインに扱うギャラリーショップ「Bappa 4.5」を立ち上げる。
中山道と甲州街道の接点であり、諏訪大社下社の秋宮からもほど近いこの場所で、築40年ほどの木造住宅を借りコツコツと改装しながら、活動の拠点として、そして宮澤さん一家が住む住居として活用している。
しかし、建築設計事務所と生活雑貨には、どのような関係があるのだろう?
「例えば、この事務所とギャラリーには畳と四畳半の間取りを残しました。現在の一般住宅からは畳が無くなりつつあるという現実がありますが、実は天然素材を使用した畳の上での生活は身体にも環境にも優しいんです」と宮澤さん。
「でも、現在主流となっている床材はフローリングです。ロボット掃除機で掃除をすることもできるので、とても効率的で便利だとは思います」
フローリングを否定するつもりはないという宮澤さんだが「僕は朝、仕事をはじめる前に自分できちんと床(畳)を掃き清めてから仕事をしたいと思っています」
「そして、そのためには、“ほうき”という道具が必要になりますよね? ですから居住空間に合わせた“必要な道具”も提案しているんです」ということだ。
「そして、まだ今ならそんな“少し昔の暮らし”を体現できるんです。好みの問題もありますが、そういう暮らしをすることによって、掃除ひとつをとっても無意識ではいられなくなると思っています」
「つまり、何か1つの道具を触ったり、使っていくことによって自分の感性に“スイッチ”が入ると思うのです。だから、道具である生活雑貨も含めた暮らしの提案をしたいと思っています」ということだ。
お話は理解することができたが、なぜこのような思いを持つに至ったのだろう?