人口減少と大都市への一極集中が進む中、あえて“大都市ではない場所を自ら見出し、好きなことに生きる人たち”がいる。彼ら彼女らはなぜその地を選び、どのような暮らしで生計を立てているのか知りたい。というわけで連載『好きな場所で生きる』の第2回をお送りする。
長野県を代表する温泉のひとつ上田市の別所温泉。その、温泉街のメインストリートにあるのが「アースワークス」だ。
アースワークスは陶芸を中心としたギャラリー&ショップである「アースワークス・ギャラリー」と、築100年の古民家をリノベーション(改装)した「アースワークス・ゲストハウス」からなる。
この「アースワークス」を、別所温泉に移住し33年かけて築き上げてきたのが、陶芸家であるロベルト W.バウマンさんとルミ W.バウマンさん夫妻だ。
2人はどのような思いで、この地に「アースワークス」を立ち上げ活動してきたのか? ルミさんに別所温泉の繁華街から進んだ山の中にあるご自宅兼工房で、その道のりについてお話を伺った。
東京生まれのお嬢様!?
ルミさんは、1957(昭和32)年に東京で生まれた。お兄さんがいる2人兄妹で「生まれたのは杉並区だけど、育ったのは大田区。学校は目黒区のトキワ松学園に中学校から高校まで通いました」
「中学校のころは1クラスしかなくて、芸能人が子供を通わせるような学校でした」と、お話を聞く限り、都会的かつ経済的に恵まれた環境で育ったようだ。
「祖父母も東京生まれだったので、私には“田舎”というものがなかった。夏休みになると同級生がおばあちゃんのところへ行ってきたとか、昆虫採集をしたとか・・・それがすごく羨ましかったですね」と当時を振り返る。
その後ルミさんは、絵が好きだったとこともあり、杉並区にある女子美術大学へと進学する。「でも、何を専門に勉強するかは決まらなくて、とりあえずデザイン科に進むことにしました」とのこと。
「学校では最初の2年間、生徒にいろいろなことを学ばせます。粘土をこねたり、彫刻を彫ったり美術全般を『まずはいろんなことをやってみなさい』という感じでね」
そんな中、ルミさんは次第に陶芸に惹かれていく。そして、その魅力にのめり込むにつれ「大学って何のために行ってるんだろう?」という思いが募ったそうだ。
大学3年の時に「ちょっとお休みします! みたいな感じで・・・両親にも反対されたんだけど」と、大学を休学し、陶器の一大産地である茨城県の笠間に移り住むことにしたそうだ。