町の人たちが存続を望んだ駅そば店
黒姫駅にある駅そば店の名前は、その名もずばり「黒姫駅そば店」。前述した通り、北陸新幹線の開業に伴い、黒姫駅の経営もしなの鉄道に移管されたわけだが、そのタイミングでかつてJRの関連会社が経営していた駅そば店はいったん閉店したそうだ。
しかし、駅そば店の再開を望む町民の声は大きく、まずはしなの鉄道が直営店として再び営業を開始。その後、信濃町が自ら運営することを決断したということだ。そう! この店はまさに“町の駅そば店”なのである。
お店の営業時間はそれほど長くないし、休みも不定休とのことなので、訪れる前には、お店を運営する信濃町振興局へ確認の電話(※記事末に記載)を入れた方がいいだろう。
黒姫駅そば店のそばは「特上そば」と「駅そば」から麺を選択する。これは要するに、特上=生麺と駅そば=ゆで麺を選択できるシステムで、長野県の多くの駅そば店でも採用されている、ちょっと独特なシステムだ(他の県でも採用されているケースはあるのだろうか?)。
また、黒姫駅そば店の場合、特上で3分、駅そばが30秒とそばが提供されるまでの時間も異なってくる。
メニューはかけそば(極上350円、駅そば320円)、かけうどん(320円)からのラインアップ。トッピングは、えび天ぷら(250円・2本)、鴨肉(190円)、とろろ(180円)、山菜(140円)、かき揚げ(100円)、玉子(40円)、ねぎ(30円)と豊富だ。
最上級メニューである「(特上)えび天玉子そば」(※このお店の名物とのこと)が640円。単品でオーダーしても「(極上)かけそば+えび天ぷら+玉子」の内訳が、350円+250円+40円=640円となるので、値段は同じだ。極めて明朗な会計だといえる。
つまり、麺を選択して好きなトッピングを載せればいいわけだ。
また、大盛り(100円)と発泡カップ(20円)もある(一瞬「発泡酒が20円で飲めるの!?」と驚いたが、テイクアウト用の容器のことだった)。
というわけで、麺は「駅そば(ゆで麺)」を選択して、「山菜そば(460円)」をお願いすることにしたのだが・・・
訪れた日は連休中で、多くのお客さんが車に乗って駅そばを食べに来ていた。ナンバーを見ると長岡ナンバーが多い。そっか! 新潟県との県境の町だもんな。
黒姫駅の隣駅は妙高高原駅であり。駅が所在するのは新潟県妙高市なのだ。
ちなみに、北陸新幹線の開業により新潟県内の在来線は、えちごトキめき鉄道がその経営を引き継いだ。妙高高原駅は、かつてのJR路線を引き継いだ2つの鉄道会社の乗り継ぎ駅となっているわけだ。
しかし、駅を運営する鉄道会社が変わっても、町の人たちは駅そば店を残したかったんだなぁ・・・としみじみ考えてると「山菜そばお待ちのお客さーん!」との声がかかった・・・やっぱり山菜そばだったんだ(笑)
「極上そば(生麺)」もおいしいとは思うのだが・・・筆者はゆで麺も捨てがたいと思っている。もしかしたら“駅そばはチープであれ!”という刷り込まれた価値観があるのかもしれないけれど・・・うまいよ。ゆで麺。
まずはひとくち。麺はつるつるしたタイプでのど越しもいい。箸で持ち上げると、湯気とともにダシの香りが立ってくる。麺はつゆをリフトアップするので、そのまま思う存分すするわけだ。
つゆは関東風だが、薄味でおだやかな味だ。しかし、出汁がしっかりと効いているのでバランスが取れていると思った。醤油感がもっと強いタイプのつゆも好きだが、出汁の香りが強いので全体的に豊かな味がする。
山菜というトッピングは、筆者の場合、天ぷらを避けたい場合に頼むことが多いが、その思惑通りのスッキリ味だ。
天ぷらをトッピングすると、その味がつゆに移ることによって発生する“味変”も駅そばの醍醐味ではあるが、時としてシンプルにそばとつゆを味わいたい局面もあるわけで・・・そんな時には山菜こそが至高なのである。
きちんと作られた、とてもおいしい駅そばだった。ごちそうさま!
終わりに
町の人たちが必要とし、自分たちの力で残すことに決めた駅そば店。その味を求めて、地元からも遠方からもお客さんが集まる。素敵じゃないか! と思った。
店舗情報
- 黒姫駅そば店
住所:長野県上水内郡信濃町・しなの鉄道黒姫駅
店舗の位置:改札外(待合室)
営業時間:10:00〜15:00(5月〜10月)
11:00〜15:00(11月〜4月)
※13:15~13:45は昼休憩
定休日:不定休
問い合わせ先:信濃町振興局
電話:026-217-2535