長野県内にある個性的すぎる“駅そば店”をアーカイブする企画『信州の駅そば全店制覇の旅!』。今回は長野県上水内郡信濃町のしなの鉄道・黒姫駅の「黒姫駅そば店」をレポートする。
氷河期から江戸時代、現代へとタイムトラベル!?
長野県上水内郡信濃町は、県の北部に位置する新潟県と県境を接する自治体だ。
町内には諏訪湖に次いで長野県で2番目に大きな湖である野尻湖があり、妙高山や黒姫山、飯縄山、戸隠山、斑尾山のいわゆる「北信五岳」に囲まれた風光明媚な場所で観光資源も豊富だ。
黒姫駅は、2015(平成27)年の北陸新幹線・長野駅〜金沢駅開業にともない、長野県内の在来線区間である旧信越本線の長野駅〜妙高高原駅とともに、第三セクターの鉄道事業者であるしなの鉄道に経営が移管された。同区間は、しなの鉄道・北しなの線として運営されている。
黒姫駅は、江戸時代に長野県北佐久郡軽井沢町の追分宿から、小諸宿、上田宿、善光寺宿などを経由し新潟県上越市の高田宿を結んだ、北国街道の柏原(かしわらばら)宿にある。
柏原宿は、江戸時代の俳人である小林一茶(こばやし・いっさ)の出身地であり、また晩年を過ごした場所でもある。ゆえに黒姫駅や柏原宿の周辺には、一茶の旧宅や記念館、句碑など数多くの史跡がある。
句碑には以下の句が刻まれ、台座には小説家C・W・ニコルによる英訳があった。
蟻の道 雲の峰より つゞきけん 一茶
The ants’path
Does it not reach
To yonder cloudy peak?
C.W.Nicol
ちなみに「蟻」は俳句の夏の季語だ。なんとなく風景を想像してみる。入道雲がある夏の青空の下にアリの行列が続く風景みたいな感じかな・・・?
子供の頃に、よくアリ行列を見つけては、追跡したよなぁ。などと、ちょっと少年時代の夏について思いを巡らせつつ、駅舎に入っていくと・・・
野尻湖はナウマンゾウの化石が発見された湖としても有名だ。ナウマンゾウとは40万年ほど前、地球が氷河期だった頃に日本に生息したゾウの一種だ。
ナウマンゾウは日本各地で発見されているが、野尻湖からは歯の化石だけでも約40頭分が発見されているなど、日本有数の発掘地なのだ。
また、野尻湖からはナウマンゾウの化石とともに「野尻湖人」と呼ばれる旧石器時代の人々が作り出したとされる、石器や骨器も発見されている。これらの痕跡は約4万年ほど前、つまり日本でもっとも古い人々の暮らしを知る手がかりともなっている。
しかし、氷河期から旧石器時代、江戸時代、そして平成の時代に新幹線の開通によって並行在来線となった黒姫駅・・・この地に残された数々の歴史の通過点の振れ幅が大きすぎて、まるでタイムトラベルしたような気分になってくる。