“ラムラム王”と“イルフ”ってなに?長野県岡谷市で見つけた謎の言葉を調査せよ!

ラムラム王とイルフの謎に迫る

さて、筆者を岡谷駅からイルフ童画館まで誘った“2つの謎”について解き明かしていこう!

まず1つ目の謎。「ラムラム王っていったい何者?」

『ラムラム王』は、1926(大正15)年に武井によって書かれた童話で、主人公であるラムラム王の本名はフンヌエスト・ガーマネスト・エコエコ・ズンダラー・ラムラム王。

館内でもフンヌエスト・ガーマネスト・エコエコ・ズンダラー・ラムラム王を発見!背景のタペストリーは本で使用された扉絵だ

名前がこのように長ったらしいのは、父親がラムラム王が生まれた際に“長生きして欲しい”という願いを込めて長い名前を付けたためだという。

名前に“王”と付くものの、単に名前の一部であり実際には貧乏人の子供であるという設定だ(しかし、物語中では、訪れるさまざま国で何度も文字通り“王”となるのだが)

物語は、ラムラム王が変身の術を使い不思議な国々を巡りつつ進んでいく。

銀貨社発行の『ラムラム王』

そして、ラムラム王が「1894年6月25日に、日本の国の山の中の小さな湖のほとりに生まれ変わるまで私のゆくえを探してはくれるな」という遺書を残して物語は終わる。

遺書中の日付は、武井武雄が実際に誕生した日であり、小さな湖とは諏訪湖のことだと思われる。つまり、物語はラムラム王が武井武雄に生まれ変わることを示唆してエンディングを迎えるのだ。

というわけで、「ラムラム王っていったい何者?」という答えは「武井武雄」だということになる。

岡谷の街中で、何度も出会ったのは武井自身だったということか! なるほど。すごい!

そう言われて見ると、ラムラム王が武井に見えてくる・・・よね?

そして2つ目の謎。「イルフって何?」

武井は当時、誰も見向きもしなかった郷土玩具(長野県のものだと鳩車とか蘇民将来などが有名)を収集・研究したそうだ。

武井自身も創作玩具をデザインしたとのことで、1929(昭和4)年に東京で、それらの作品を展示する「イルフトイス(ILF TOYS)展」を開催する。

「イルフ」とはすなわち、「フルイ(古い)の逆=新しい」を意味する武井の造語なのだ。

つまり「イルフって何?」という答えは「新しい」ということになる。

そう考えると“イルフ”も“童画”も武井が創り出した言葉だ。つまり「イルフ童画館」は、武井が生み出した単語のみを使った美術館名ということになる(「館」を除くが)。そして、その意味は“新しい童画館”だ! なるほど。すごい!

はっ!・・・となると、「イルフ食品館」は“新しい食品館”か・・・とても新鮮そうだ!

イルフ(ILF)も童画(DOGA)も武井が創った言葉

終わりに

岡谷駅前で偶然に出会ったラムラム王の導きにより、武井武雄という芸術家を知ることができた(武井自身が導いてくれた・・・ということにもなるんだけど)

この記事では、筆者が気になった“2つの疑問”を解明することにフォーカスしたが、武井の多彩な才能と作品に触れてみたい方は、イルフ童画館を訪れてみることをオススメする。

謎が解けてスッキリ!帰り道、近くにある「富士アイス」で「じまんやき」なるものを買った。うまかった

関連情報

  • 岡谷市 日本童画美術館 イルフ童画館
    住所:長野県岡谷市中央町2-2-1
    TEL:0266-24-3319
    FAX:0266-21-1620
    開館時間:10:00〜19:00
    定休日:水曜日(祝日は開館)※展示替えによる臨時休館あり
    アクセス:長野自動車道 岡谷ICから5〜10分
    最寄駅:JR中央本線 岡谷駅から徒歩5〜7分

武井武雄プロフィール

明治27年〜昭和58年 岡谷市出身
「子どもの心にふれる絵」の創造を目指して、自ら『童画』という言葉を生み出し、大正から昭和にかけて童画、版画、刊本作品、玩具やトランプのデザインなど様々な芸術分野に活躍し、いつも探求心をもって生涯挑戦を続けました。
『童画』という言葉を創出し、子どものための絵を総称する提案を行うとともに、童心を巧みに表現した独自の画風で童画界をリードしてきました。(出典:イルフ童画館webサイト

参考文献

  • 武井武雄『ラムラム王』(銀貨社、1997年)
  • イルフ童画館『武井武雄 イルフの王様』(河出書房新社、2014年)
  • イルフ童画館『別冊太陽 武井武雄の本 童画とグラフィックの王様』(平凡社、2014年)
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