自由に生きていろいろな人と巡り会えた
——では、ここまで深刻なトラブルも無くやってこれたという感じですか?
大橋さん:まあねぇ。
奥さん:食べるのに困るような状況にはならなかったわけだしね。
大橋さん:ある時期は自転車操業みたいになった時もあったんだけどね(笑)
——今、72歳ですよね? 今後このペンションはどうされるつもりなんですか?
大橋さん:どうしようか考えてるんですよ(笑)
奥さん:潮時もあるしね(笑)
大橋さん:自分たちが車の運転が出来るうちは住めるけど(※ペンションは住居も兼ねている)運転が出来なくなったら、すごく生活が大変になると思います。
奥さん:コミュニティバスも意外と不便だしね。
——ペンションヴィレッジには同年代の方が多いんですか?
大橋さん:多いですね。みんな同じくらいの年齢です。
奥さん:開業した頃の私たちが、ここの平均年齢でしたからね。
——みなさん跡継ぎはどうしてるんですか?
大橋さん:原村で、ペンションを子供が継いだケースは2〜3軒あるかないかかな? まだ、みんな現役で頑張っていますよ。
——そのあたりは・・・なるようになるという感じなのでしょうか?
大橋さん:まぁ考えてもね。なかなか思うようにはいかない。今がね、昔みたいに賑わって景気のいい時代だったら、子供に継がせようと思うかもしれないけれど。でも、こういう時代ですからね。今は、継いだとしても大変だと思いますよ。
——これまでペンションをやってきて一番良かったことってなんですか?
大橋さん:自由に生きてこれたことかな。それから、いろいろな人と巡り会えたこと。それが1番の財産かもしれない。
——嫌になったことはなかったですか?
大橋さん:一時期「やめようかな?」と考えたことはあったんだけどね。でもやめても、食べるためには何かしなくちゃならないでしょ?(笑)
長くやってこれたってことは、個人の努力はもちろんだけど、それなりにここを利用してくれた方がいたということですよ。
——これまでも自分たちがやりたいように生きてきたわけじゃないですか? この先まだ何かやりたいことってありますか?
大橋さん:いやぁ、もうそんなパワーも無いねぇ(笑)
一同:(爆笑)
——(笑)継続して来てくれるお客さんを大切にしながら続けるという感じですか?
大橋さん:そうそうそうそう。
奥さん:ほとんどおなじみさんだからね。
大橋さん:原村のペンションは8割方はリピーターでもってるんじゃないかな?
奥さん:年間に何度も来てくれるお客さんもいるしね。もう“その人の田舎”みたいな感じだよね。
大橋さん:ほとんどのお客さんが、都会生まれか都会育ちだからね、田舎が無い人が多いんです。
——まとめなんですけど、移住してきて・・・といっても既に移住から38年経っていますが、原村で暮らしてみてどうでしたか? あと、これから移住してみたいと思っている人に何かアドバイスがあればお願いします。
大橋さん:ぼくらもそうだったけど、夢があったら諦めないで・・・がんばれば夢ってかなうものだなと思いますよ。一般的な言い方になっちゃうけど(笑)
——だけど、それは大橋さんみたいにそんな生き方を実践していた方が言うと全然言葉の重みが違うので、いいと思います(笑)
大橋さん:(笑)
奥さん:農業をやりたい人が就農できて、それで食べていけると一番いいよね。いっぱい休耕地もあるじゃない? もったいないよね。
——原村は農業も割とうまくいっている方なのでは?
奥さん:でも、休耕地はあるよね。私なんかも、畑が空いているから使わせてもらってるけど。
大橋さん:農業って楽しいですよ。季節もわかるし。
——もう、農業もベテランですよね? そのおかげでお客さんは美味しい野菜が食べられます。
大橋さん:でも、やっぱり難しいです。自然が相手ですから。天候次第で収穫時期はずれるし。
奥さん:去年なんていい例だったよ。シーズン前にトマトが実って、お客さんが一番来る時期には無くなっちゃって、しょうがないから買いました(笑)
——(笑)
大橋さん:今年はどうなるかね?(笑)
終わりに
大橋さんが煎れてくださった、美味しいコーヒーを飲みながら和やかに取材は進んだ。
お話を伺いながら思ったのは、宿泊施設も時代の流れとは無関係でいられないということ。当時、最新の宿泊施設だったペンションは、今でいうとゲストハウスの立ち位置と似ていたのかもしれない。
でも、時代が流れても変わらないことがあるとも感じた。
それは、かんたんな言葉にしてしまえば「人」。最終的には、魅力的な人がそこにいれば、たとえ遠くても会いに行きたくなるのが人間の性なのかもしれない。
取材協力
- 大橋ペンション
長野県諏訪郡原村17217-1657
第2ペンションヴィレッジ
TEL:0266-74-2421
FAX:0266-74-2667