移住の先駆者!長野県上田市・別所温泉の「アースワークス」が切り開いてきた道とは?

アースワークスの現在と今後・・・そして

アースワークスの現在の状況と今後の展望について伺った。

「陶芸作品に関しては、現在進行形。私の中には『こういうものを作りたい』という欲求が常にあるんです」ということで、作品作りをメインにしつつも、“自分たちが食べていくため”の量産品もしっかり作っていきたいとのこと。

「作ったものはギャラリーでも売りますが、東京などで開催する個展でたくさん売る。今、陶芸の世界では“売るのが大変な時代”だと言われているけれど、おかげさまで私たちの作品は結構売れるんです。固定客がいますからね」とルミさん。

客室のひとつ。この部屋にはロフトがついている

「ゲストハウスについては・・・まぁ、ゲストハウスが私のエッセンスになったのは最近のことだけど、いろいろな交流があって面白いですね」。そして、嬉しいのは泊まってくれたお客さんが、この場所で2人が作った陶器を実際に使って、気に入って買って帰ってくれることだという。

陶器は若いお客さんも買ってくれるとのことで、「これから長く使ってくれる人が買ってくれるのはすごく嬉しい。しかも、それが世界中で使われるわけでしょ? 素直に『ありがたいな』と思っています」と語ってくれた。

客室には古いタンスや民芸品(背負子<しょいこ>)が置かれていた

別所温泉で、33年間続いてきたアースワークス。その“引き継ぎ”については、どのように考えているのだろう?

「子供たちは、今ニューヨークに住んでいるし、いつか帰ってきたければここに来ればいい。でも、私は、あまり将来のことを心配しないんです。嫌なこともすぐに忘れるし。いいこともわすれちゃうんだけど(笑)だから、今しか見ていません」ということだ。

最後に、移住を検討しつつもなかなか最初の一歩踏み出すことができない、都会で暮らす人に何かメッセージはあるかと聞いてみた。すると一言・・・

「都会は捨てて、ぜひ田舎に引っ越してください」とルミさん。

「私たちもそうしてきたんです。そして住んでみないとわからない。その場所の空気を吸わないとわからないことがある。それに、別所温泉には“お試し移住部屋”だってあるし。『まずは来てみたら?』と言いたい」

洗面鉢も、もちろん陶器製

「行動を起こさないってことは、結局のところ、“合理的にお金を稼ごうとして都会にしがみついている”だけではないか? とも思います」

「でも、今はそんな時代じゃない。いろいろな働き方ができるし、自分で環境を作っていくことだってできるはず。『なんの恐れもない。ただ飛び込んでごらん』と言いたいです(笑)。そうすれば絶対に先が見えてきます

「別所温泉に、外から“何もわからない人”が来てくれるのは嬉しいこと。そういう人たちと一緒に、この場所をもっと良くしていきたいですね」と語ってくれた。そして・・・

「だから、私も少しずつでも“新しい種”をまいていくつもりです。まあ、どの芽が出るかは、わからないけれど(笑)」と、ルミさんは笑った。

終わりに

“かっこいい大人”がいることに感謝する。これが筆者の感想だ。

「今の時代が・・・」とか、「経済が・・・」とか、いろいろ状況を分析してみても、時間は過ぎていくばかりだし、人生は一度きりだ。

「好きに生きればいいじゃないか。迷わず進め」

そんな言葉通りに生きてきた大人が、今でも現役で格闘し続け、日々の喜びをたたえ合う姿をお伝えできたと思う。

ルミさん、ロベルトさん、ありがとうございました!

取材協力

プロフィール

  • ロベルトW.バウマン
    ニューヨーク生まれ。グラフィックデザイナーとしてニューヨーク、スイス、スエーデンで活動を続ける。ビートルズクリスマスアルバムを手がける。1985年上田市に移住。中米在住の時から続けてきた木彫などの創作に取り組む。1986年別所温泉の小高い山の中腹を切り開き自宅と工房を建て始める。今も建て増し改修が続く一生の仕事となる。1988年工房完成後、築窯、木と土の融合によるオブジェ、陶板などの創作開始。1993年アースワークスギャラリーを設立。日本クラフト展、美濃国際陶磁器展、朝日現代クラフト展、めん鉢大賞展、アメリカンセラミックコンペティションなど入選
  • ルミW.バウマン
    東京生まれ。女子美術大学部デザイン科中退。茨城県笠間市にて伊藤東彦氏、堤綾子氏に師事。その後中米グァテマラに渡り、インディオからいざり織を学ぶ。ニューヨークに戻りロベルトと共にグラフィックデザインの仕事を始める。その後スローライフな生活に戻るため別所温泉に移住、再び作陶生活を始める。主に食器、オブジェの花器を作る。日本クラフト展、草月花の器展、日本陶芸展入選、2015年菊池ビエンナーレVI奨励賞受賞