長野県飯山市の「かまくらの里」には“雪”を観光資源として捉える先見の明があった

なぜ飯山でかまくらを作るようになったの?

しかし、なぜこの地でかまくらをこれほどたくさん作るようになったのだろう?
実際にかまくらを作っている「外様(とざま)かまくら応援隊」の小林和人(こばやし・かずと)さんにお話を聞くことができた。

クールな装いの小林さん。雪だらけの世界でサングラスは必須

「もともと、ここ外様地区(飯山市・信濃平)には『信濃平スキー場』があって、観光客がたくさん来ていたんだけど、スキーブームが終わっちゃってね。手は尽くしたんだけど、スキー場は赤字経営になっていった。それで、2001(平成13)年にスキー場が閉鎖することになったんだ

「ここは豪雪地帯でしょ? 雪を活かすしかないんだよね。スキー場がなくなれば、観光客も来なくなるだろうし・・・で、何かないかと考えたときに『かまくらはどうだ!?』ってことになったんだよ」と小林さん。

かまくらを観光資源の中心に決め、そこから試行錯誤が始まったという。

取材日は「かまくら祭り」の当日。子ども達が、雪遊びを楽しむスペースも作った

絵の具をもらって、かまくらやに雪に色を塗って遊べる

でも、これだけたくさんのかまくらを作るのは大変な労力がかかるのではないだろうか?

「かまくらは、雪を積み上げ固めてから穴を掘るのが普通の作り方。でも、それだと重労働でね。今回この会場には、20を超えるかまくらがあるけど、作ることができるスタッフも限られているし・・・そこでいいアイデアを思いついたんだ(笑)」と不敵な笑いを浮かべる。

なんでも、かまくらを作る「外様かまくら応援隊」に、アウトドアグッズのメーカーに勤めるスタッフがおり、その方を中心に考え出されたのが・・・

“かまくらくん”だ!! 写真中央の風船状の物体(写真提供:外様かまくら応援隊)

“かまくらくん”は、空気を入れ膨らませることで、かまくらの成型に必要な形を作り出す、言わば“かまくらの型”だ。その上から除雪機で雪をかけ、形を整えてから空気を抜くことで、均一な大きさと強度を兼ね備えたかまくらを作ることができるようになったそうだ。

「この方法を考え出してから、手作業で作るよりかんたんに、たくさんのかまくらを作れるようになった」とのこと。

「そして、年を重ねるごとに客さんが増えていった。地獄谷野猿公苑(じごくだにやえんこうえん<スノーモンキーパーク>※温泉に入るサルが外国人観光客に人気)が近くにあるから、そこから外国人が来るようになったりしてね。北陸新幹線が開通してからは、駅前にもかまくらを作ってアピールしているよ」ということだ(さっき見てきたやつだ!)

「飯山のかまくらが、全国的に注目されるようになってからは、ほかの観光地からも視察が来たり、かまくらを作りに来てくれと頼まれたりするようにもなった。でも、ノウハウとか全部教えちゃってるんだけどね(笑)」と笑う小林さん。

「かまくら祭り」では、雪上車に乗ることができるし・・・

スノーモービルにも乗れる(ともに500円)

「かまくらの里」の今後についてお伺いすると、「『外様かまくら応援隊』も、60〜70代がメンバーの中心で、他の年代のスタッフが少ないんだよね。だから、ここのかまくらもあと何年持つかな・・・とも思ったりするよ。でも、今年は東京と大阪から大学生のボランティアがたくさん駆けつけてくれてね。とても助かっている」ということだった。

軽食や飲み物、地域特産品などを扱うテントがずらりと並ぶ

「俺は元教師なんでね(笑)」と前置きしつつ、「かまくらの語源は、神座(かむくら)だという説があって、つまり神の降りてくる場所ってことでしょ? だから、ここにも神社を作ったんだよ。テレビの取材なんかでは、いつもこの話をしてあげるの。喜ぶよー(笑)」と笑っていた。

最後に「暗くなる頃に、ミニかまくらに明かりを灯すから見ていってよ!」とおっしゃってくれた。

スタッフジャンバーが決まってる! ありがとうございました!

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