長野県上田市・別所温泉に移住してシェアハウス「別所ヴィレッジ」をはじめたわけ

“別所ヴィレッジ”の立ち上げ

2014(平成26)年の9月に別所温泉に移住した松江さんだが、2016(平成28)年の秋に新たな行動に出る。

「移住してできた友達が、ここを(やがて“別所ヴィレッジ”になる古民家)を買おうとしていたんです。上田市が運営する『信州うえだ空き家バンク』に登録されている物件でした」

「私が建築の仕事していることもあって『松江さんも見る?』と誘われたんです」ということで、一緒に物件を見に行ったことがきっかけとなり・・・

カフェバー「BLUNO」の前には、木製のベンチが置かれている

松江さんが古民家を買うことになった。

理由尋ねると「建物を気に入ってしまったんです。それで、職業柄というか、なんかここをいじりたくなったんですよね。貯金をはたいて買ってしまいました(笑)」ということだが、では、なぜシェアハウスにしようと思ったのだろう?

「私は、ゲストハウス(安価な素泊まりの宿。外国人旅行者などにも人気)が好きで、東京出張などでも利用するのですが、ゲストハウスを自分でやるとなると、毎日常駐してさまざまなことをしなければならない。私は他にも仕事を持っているので、賃貸で貸し出そうと思ったんです」ということだ。

別角度から見る“別所ヴィレッジ”

2017(平成29)年1月に古民家を購入。その後、リノベーションのプランを立て、見積もりを取り、3月から改装を始めたそうだ。

古民家の改装は、普段の仕事の延長みたいな感じでした。自分で図面を引いて、作業は大工さんに、壁を塗るのは左官屋さんにお願いしました。塗装やタイル貼りなど、ちょっとした作業は自分でもやりました」

改装は順調に進み、4月29、30日を“別所ヴィレッジ”のプレオープンの日とした。関係者や協力者を呼んでお披露目のイベント行ったとのこと。そして、5月1日には入居者も引っ越して来た。

現在の入居状況を聞いてみると、住居スペースの3部屋は、空きが1部屋。テナントには、カフェバーと、ITベンチャーのオフィスが入居し(ちなみに“別所ヴィレッジ”には光回線が導入済み)夏頃にはカメラマンの事務所が入居する予定とのことだ。

“お試し移住部屋”について

冒頭でも紹介した“お試し移住部屋”について伺った。

文字通り“移住を試して頂くため”の部屋です。というのも、私は運良く別所温泉と“合った”からいいけど、誰もが私と同じようにジャストフィットするわけではないと思うので、まずは、試しに住んでもらえればと思ったんです」

ちなみに、この部屋には1ヶ月40,000円(それよりも短期も可能)で“お試し移住”ができるそうだ。

“お試し移住部屋”には、にゃーにゃーが案内してくれた

「ちょっと引っ越ししてみない?」というのがコンセプト。移住することを重く考えずに「ダメだったら元の場所に戻ればいいじゃん!」というくらいの感覚で、気軽に使ってみてほしいとのこと。

備え付けの机やタンスにもセンスが光る

現在の住居スペースへの入居者について聞くと「20代前半から30代くらいの人が多いです。別所温泉に移住して来る人は、面白いことにアンテナを張っている人が多い印象ですね」ということで、松江さんを交えて一緒にお酒を飲んだりすることもあるそうだ。

簾(すだれ)の付いたクラシカルな障子が美しい

移住について、今後について

最近、若い人が新天地を求めて大都市から地方へ移住するという話をよく聞く。また、松江さんも含めて、これまで都会で働いてきた世代も、高齢となった両親のことを考えたり、これまでと違った生き方を模索したりする中で、移住を検討している方も多いのではないだろうか? そんな人たちに何かメッセージはあるかと聞いてみると・・・

「流れに乗ることが大事」だと松江さんは言う。

「あと、東京に比べると田舎は安く楽しく暮らせるので、お金はなんとかなるよ(笑)とも言いたいです。わたしの場合は、結婚していないので動きやすかったというのもある。相手がいると大変かもしれませんね」と話し、次のように続けてくれた。

「でも、友達の奥さんは東京出身ですが、ご両親が別所温泉の娘の家へ遊びに来るようになって、こっちを気に入ってしまい、東京のマンションを売って上田に引っ越してきましたよ。そういうパターンもあります」ということだ。

「私の場合ですが、北陸新幹線があるので東京での仕事もできるし、実家がある富山にも帰りやすいというのはあります。私にとっては、別所温泉はとてもいい場所なんです

にゃーにゃーと松江さん

最後に、これまでも「これがしたい!」と思うと、一直線に実行してきた松江さんではあるが、今後の展望について伺ってみると・・・

「うーん。今は落ち着いちゃったからなぁ(笑)・・・でもそういう意味では「別所ヴィレッジ2」を作りたいですね! 5年後くらいにお金が貯まったら!」と笑った。

終わりに

「流れに乗ることが大事」という言葉が印象に残った。

松江さんは、移住してからたくさんの友達ができ(移住者もかなり多い)、仕事に関してはこれまで通り東京の仕事を受けつつも、積極的に地元の案件も増やしていきたい話していた。

筆者も“お試し移住部屋”に一晩泊めていただいたのだが、たいへん快適で、朝から入れる温泉が歩いてすぐの場所にあるという環境がつくづく羨ましいと感じた。

この記事を読んで興味を持った方のためにも、“お試し移住部屋”コンセプトをもう一度記載しておく。

「ちょっと引っ越ししてみない?」

“別所ヴィレッジ”には、ネコのための通路もある

取材協力

別所ヴィレッジ(Facebook
長野県上田市別所温泉195-1

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