最初は狩猟をするつもりではなかった
ーー新潟県のご出身で、地域おこし協力隊として木曽に住むようになったそうですが、ここに来るまでに狩猟の経験はあったんですか?
ないですね。やりたかったのは利活用なんです・・・つまり、駆除した害獣たちをきちんと再利用すること。私が木曽に来る、2〜3年前ぐらいから全国各地でそうした動きがはじまって、ネットワークも構築されつつあったんです。
ーーそれは獣肉=ジビエとして活用するということですか?
ジビエとはまた別の活用方法で、獣の“皮”を“革”として利用すること。「MATAGIプロジェクト(※)」という私も参加してる団体があって、地方で廃棄されている害獣を資源として活かせないか? という取り組みが、ちょうど私が木曽に来る頃にはじまっていたんです。
つまり、害獣の活用に取り組むことで事業というか・・・ビジネスモデルを作ることができないか? と考えて木曽に来たわけです。
ーーなるほど。最初からそうしたアイデアがあって地域おこし協力隊に応募したということなんですね?
そうです。
ーー木曽に来てからは、どのように活動をはじめたのですか?
最初は完全に素人だったので、わな猟の免許(※)を取るところからはじめました。今では銃猟の免許も取りましたが、本当は自分で狩猟するつもりはなかったんですよ(笑)
ーーどういうことでしょう?
つまり、自分で狩猟をしなくても、駆除された害獣が大量に廃棄されている現実があるわけです。でも、回収するシステムがない。それを構築するのが自分の役割だと思っていたわけです。
しかし、猟友会の人たちにそうしたことを説明して、「害獣を捨てるのならください!」と言って回ったところで、そんなに簡単には物事は進まないということがわかりました(笑)
ーー害獣駆除の中心を担っているのは猟友会なんですか?
そうですね。町が猟友会に委託しているんですよ。
ーー猟友会の年齢層はどんな感じ?
やはり年配の方が多いですね。平均年齢は70歳に近いと思います。そんな現実もあって、猟についてきちんと知るべきだと思ったんです。だから狩猟免許を取りました。
ーーやはり、現場を知っておくべきだと思ったのですね?
そうですね。いくら廃棄する害獣を活かせると話したところで、獲った人からすれば、ただで獲物を渡せと言われているわけですから。
自分でも狩猟をすることで、真剣な取り組みであることを伝えたかった。ですから、猟友会にも入って、みなさんと一緒に猟に出るようになりました。
ーー猟友会に入って活動するのはどんな感じなのでしょう?
新参者として迎え入れてもらって、現場でいろいろな経験させてもらいましたね。あたりまえのことですが、最初は何ひとつわからないわけです。獲物の解体の方法も覚えなきゃいけないし・・・
そして、だんだんと猟友会の仲間が連絡してくれるようになりました。私が獲物を欲しがっていることを知っているからです。「捕れたけどいる?」というような連絡をちょっとずつもらえるようになって、そんな輪が広がっていったという感じです。
ーー当時もらった獲物はどうしていたんですか? 捌く場所も必要でしょうし・・・獲物がドカンと届いても困るわけじゃないですか?
(笑)。私が所属している猟友会は個人で動いている人が多いんです。みんなで集まってどこかに狩りに行くというよりは、個人が自分の家の近所にわなをかけたりとか、そういう人たちが点在している状況です。
「獲った獲物を解体するから来るか?」とか「皮が欲しいのなら持っていくか?」とか、そういう機会が増えていったわけです。
ーーなるほど。猟友会の繋がりでいろいろな経験を積むことができたんですね。
もう本当に、現場ですべてを教えてもらったという感じですね。