いにしえの人々も愛でた!?長野県千曲市の「姨捨(田毎の月)」で棚田と十五夜の月のコラボレーション!

雲がかかる稜線から姿を現した十五夜のお月様

美しい風景や景観、魅力的なシーンをピックアップして、写真を中心にお伝えする企画『フォトレポ』。今回は、長野県千曲市の「姥捨(田毎の月)」をレポート。

古くから知られる月の名所

月の名に立つ姥捨山(おばすてやま)〜♪

と、多くの県民が唄えることでも知られる長野県歌『信濃の国』にも登場する、長野県千曲市の姥捨(田毎<たごと>の月)は、月の名所として知られる名勝だ。

姥捨山は天台宗の寺院・長楽寺の山号でもある

その存在は古くから知られており、平安時代に編さんされた『古今和歌集』では月の名所として、『大和物語』では、かの有名な「姨捨伝説」について記されている。

長楽寺の境内には姨岩(おばいわ)と呼ばれる巨岩があり・・・

その頂上から姨捨の棚田や千曲川、対岸の山々を一望できる

江戸時代となり棚田の開発が進むと、小さな田んぼの水面に月が映る光景が注目を集め、松尾芭蕉(まつお・ばしょう)や小林一茶(こばやし・いっさ)といった多くの文人墨客が訪れるようになる。そして文学や絵画の題材として盛んに取り上げられた。

“田毎の月”とはつまり、斜面に並ぶさまざまな形をしたそれぞれの田んぼの水面に、月が移りゆくことを表した言葉なのだ。

月は対岸の鏡台山(きょうだいさん)付近から昇る

長楽寺の境内に立つ芭蕉の句碑

「おもかげや姥ひとり泣く月の友 芭蕉」

俳句を投句できるポストがあった

長楽寺から棚田までは歩いて2〜3分だ

姨捨の棚田は、国の重要文化的景観や日本の棚田百選に選定されている

夏が終わってお米もだいぶ実ってきたようだ

今回ここを訪れたのは、棚田の稲も金色に染まりつつある9月中旬=旧暦の8月15日。つまり中秋の名月(十五夜の月)が昇る日だ。

ちなみにかつてこの地では、皆既月食の観察をしたこともある。

芭蕉や広重も愛でた月!?長野県千曲市の“月の名に立つ姨捨山”で「皆既月食」が見たい!

いにしえの人々も愛でたであろう、姨捨に昇る十五夜のお月様とはいったいどのような光景なのだろうか? というわけで、月が出るのをしばらく待つ。

姨捨の十五夜のお月様

あたりは次第に暗くなり、月の出の時刻を迎える。長楽寺の姨岩の頂上からその瞬間を待っていると・・・

鏡台山の山頂の右側から月が現れた

月に雲がかかり幻想的な光景だ

ズームアップして鏡台山の稜線とともに撮影

月が出没する方向には多くの雲があり月の出が見られるか心配だったが、いい感じに雲に隙間ができた・・・うん! 快晴の空よりも雲があった方が雰囲気もある。

でも、月が高度を上げて雲の中に入ってしまったので、見る場所を変えることにする。そこで長楽寺から600mほどの場所にある、JR姨捨駅へ行ってみることにした。

姨捨駅・駅舎のエントランス

ホームには月を眺める人々が結構いる

姨捨駅のホームから善光寺平を見下ろす風景は、日本三大車窓のひとつだ

松本 伊那 佐久 善光寺〜四つの平は肥沃の地♪

これもまた、多くの県民が唄えることで有名な長野県歌『信濃の国』の歌詞だが、県民は盆地のことを平(たいら)と呼び、湖のことを海(うみ)と呼ぶ・・・たぶん、かつての海無し県の住人たちは本当の平野や海を見たことがなかったのかもしれない・・・文句ある!?

ちなみに、善光寺平=長野盆地とは千曲市、長野市、須坂市、小布施町、中野市にかけて広がる千曲川流域の平地のことだ。

善光寺平の夜景。写真中央の黒い部分は千曲川

月は雲に覆われたままだったが・・・

しばらくすると雲を抜けた

十五夜のお月様

長楽寺に戻ってラストショット。棚田にはあぜ道に沿って照明が灯されていた

終わりに

多彩な景観と組み合わせて月を堪能できるのが、姨捨の魅力だと思った。今度は、棚田に水が張られる頃(5月中旬頃)に訪れて、田んぼごとの月=田毎の月を見てみたい。

JR姨捨駅は“スイッチバック式”の駅だ。駅名表示板にもその線形が示されていた

アクセス

  • 姨捨観光会館
    (※長楽寺に隣接した観光施設。姨捨の棚田、JR姨捨駅にも駐車場あり)
    住所:長野県千曲市大字八幡姨捨4993-1
    最寄駅:JR篠ノ井線 姨捨駅から徒歩で約10分
    アクセス:長野自動車道 更埴ICから車で約15分、姨捨SIC(※出口は長野方面のみ、入口は松本方面のみ)から車で約10分
    駐車場:あり
    電話番号:026-273-4170