
標高800〜1,000mに位置する下栗の里
国道152号線は、長野県上田市と静岡県浜松市を結ぶ総延長264.1kmの国道だ。
なかでも長野県下伊那郡大鹿村から飯田市南信濃の区間は、国道が途切れている地点=「分断国道」と呼ばれる場所が2箇所あることや(※ともに林道を利用することで迂回可能)、車のすれ違いが困難な道幅の狭い箇所も数多く存在するため、いわゆる「酷道」としても知られている。
分断国道の一つである地蔵峠は、蛇洞林道(じゃほらりんどう)を迂回することで峠越えすることが可能だが、軟弱な地盤であることから通行止めになることも多い。
ちなみに地蔵峠を越えた先には大鹿村がある。


訪問時も蛇洞林道の途中でゲートが閉ざされていた

通行止めの理由は道路の崩落による災害復旧工事のため
しかし、今回この地を訪れたのは地蔵峠を超えるためではない。
このあたりには、日本で唯一の隕石クレーターと“天空の里”と呼ばれる場所があるのだ。隕石と天空! 何だかとてもワクワクする設定ではないだろうか!?
それらの場所へ向かうには、地蔵峠の南側、つまり飯田市上村側の蛇洞林道から分岐する御池山林道(※途中から南アルプスエコーラインと呼ばれる道となる)を進めばいいらしい。

蛇洞林道と御池山林道の分岐点。どちらの道も全面舗装されている
というわけで、この林道を巡ってみることにした。
蛇洞林道からしらびそ峠へ
まずは地蔵峠の南側、飯田市上村の蛇洞林道(国道152号線迂回路)と御池山林道の交差点からしらびそ峠を目指す。

御池山林道の道幅は1.5車線といったところ。車のすれ違いはそれほど難しくはない
しばらく進んでいくと、道路の山側が崩落したと思われる箇所にさしかかったのだが・・・

どーん! 工事現場の土留めには、恐ろしげなお面がずらりと並んでいる。これはいったい・・・

・・・うーむ、夜間にヘッドライトで照らしたらもっと怖いかも
種明かしすると、これらはこの地域=遠山郷(飯田市の旧下伊那郡上村と南信濃村)に古くから伝わる伝統行事「霜月祭り(国重要無形民俗文化財)」の面だ。
霜月祭りでは、毎年12月に上村と南信濃村の各神社で湯立神楽(社殿の中央に湯を煮えたぎらせた釜が置かれ、祭りのクライマックスに天狗などの面が登場し、煮えたぎる湯を素手ではねかけ邪悪を払う)が奉納される。

・・・でも、霜月祭りのことを知らない人がこの道を通ったらきっと驚くだろうな。
さらに進んでいくと・・・

展望が開けた場所に出た!

御池山林道のピークである、しらびそ峠(標高1,833m)に到着!

そこからは南アルプス(赤石山脈)南部の山々(※写真のほぼ中央に見える背後の山が百名山の聖岳<3,013m>)を一望できる

南アルプスを作り出した断層や構造線についての解説があった
しらびそ峠から御池山隕石クレーターへ
さて、しらびそ峠から御池山隕石クレーターを目指すことにする。ちなみに、ここから先は南アルプスエコーラインと呼ばれる道となる。

道幅はさらに狭まるので対向車に注意して進む

ホンダ・カブのツーリング集団と遭遇。原付バイクで走るのにちょうどいいコースかもしれない

さらに進むと、道の左側に何やら看板が・・・

「日本で唯一 御池山隕石クレーター」と書かれた看板
御池山隕石クレーターは、南アルプスの御池山付近にある日本国内ではじめて発見・確認された隕石衝突によるクレーターだ。
看板によると、
ビューポイント
道路から、クレーターの全景が見渡せる唯一の場所です。正面に見える尾根がクレーターの縁になります。
ということは・・・

この山の尾根(※赤色の破線)がクレーターの縁ということか・・・でかっ!
さらに道を進んでいくと詳しい解説が記された看板が立っていた。

「日本初!御池山隕石クレーター総合案内板」とある
解説を要約すると、
- クレーターの大きさは直径約900m
- 2〜3万年前(氷河期の終わり頃)に直径約45mの小惑星が衝突したと推測されている
- 急な斜面にできたクレーターであるため浸食され崩れた部分も多く、痕跡が残っているのは約40%
ということだ。

航空写真を拡大。つくづくクレーターでかい・・・
しかし・・・もし、この現代に小惑星が落下してきたら・・・まぁ、とんでもないことになると思うけど、実際にクレーターが存在する風景の中にいると、やはり宇宙や地球の驚異に思いを馳せてしまう。