長野県辰野町にある「日本中心のゼロポイント」が日本の中心って本当なの?

「日本中心のゼロポイント」とは?

「日本中心のゼロポイント」にはウッドデッキがあり

この地の緯度経度が記載されたモニュメントが立つ

側面には「日本中心のゼロポイント」と刻まれていた

看板にはこの地が“日本の中心”であことの根拠が解説されていた

日本中心のゼロポイント

日本国内には、緯線と経線が00分00秒で交わる“ゼロポイント”と称される位置が40ヶ所ほどあると言われています。

ここ、北緯36度00分00秒、東経138度00分00秒の交点は、日本列島にあるゼロポイントの中心に位置しています。

また鶴ヶ峰に設置されている『日本中心の標』に近く、太平洋および日本海の海岸線から最も遠い内陸にあるゼロポイントです。

さらに信濃毎日新聞社刊『信州学大全』(市川建夫・著)には、次のような記述があります。


国際的に権威のある世界地図帳の出版社であるアメリカのランドマクナリ—社が発刊した「アトラス」の索引をみると、日本のポリティカル・ユニットは、北緯36度線と東経138度線の交点で示されている。これは岡谷市の西、辰野町の北に存在している。

なお、ここから東西南北に隣接するゼロポイントは、それぞれ埼玉県、岐阜県、静岡県、新潟県にあります。

これらのことから、ここを“日本中心のゼロポイント”とします。

この地の緯度経度は“分と秒が0=ゼロポイント

・・・なるほど。ざっくりと整理してみよう。

まず、「日本国内には“ゼロポイント”と称される位置が40ヶ所ほどある」について確認してみた。

白地図に“日本国内の陸上にあるゼロポイント”をトレースした(画像:国土地理院の電子地形図<タイル>に文字と罫線を追記)

数えてみると39ヶ所あったので、この文言は「現在における日本国土内の陸上のゼロポイント」を前提として書かれていると考えられる。

次に「日本列島にあるゼロポイントの中心に位置しています」だが、これは図を見て頂ければわかるとおり間違いではないだろう。だいたい真ん中にあるといっても差し支えない。

「鶴ヶ峰に設置されている『日本中心の標』に近く」という記述は、そもそもそれが何であるか知りたいのに、どこにも説明がないので理解不能。これは残念な点だ。

「太平洋および日本海の海岸線から最も遠い内陸にあるゼロポイント」だが、これも理解できる。だが、問題は次だ。

「日本のポリティカル・ユニットは、北緯36度線と東経138度線の交点で示されている」

これはいったいどういう意味だろう? この文面を見て即座に理解できる方がいるのだろうか?

まずは、耳慣れない「ポリティカル・ユニット=political unit」という言葉について調べてみた。どうやら「政治的責任を負う集団」という意味らしい。つまりは国家のことか?

これだけでは理解しがたいので、webサイト「辰野町観光サイト」を調べてみると詳しい解説が記載されていた。

なぜ北緯36度と東経138度の交点が日本の中心?

国際的に権威のある世界地図帳の出版社であるアメリカのランドマクナリー社が発刊した「アトラス」の索引をみると、日本のポリティカル・ユニットが北緯36度線と東経138度線の交点で示されているからです。

これは、薩南諸島・琉球諸島を除いた日本本土と、北海道の渡島半島南部を対象として交点を算出したものです。

琉球処分によって沖縄県が設置されるまで、宗氏の支配する琉球國は清の朝貢国であったことから、大隅国に属する種子島・屋久島以北、東北地方までの日本本土と、鎌倉時代から和人の植民地であった、渡島半島南部を対象として、北緯30度と42度の中間の36度線、東経128度と148度の中間の138度線が引かれました。

(出典:辰野町観光サイト)

解説を読むことで上記の『アトラス』が刊行されたのは、江戸時代以前であるということがわかる。

しかし、なぜ当時と大きく国土の形が変わった現在の日本において、大昔の『アトラス』の記述を論拠のひとつとしたのかが理解できない。

「日本のポリティカル・ユニット」を「欧米から見た当時の日本という国の中心」と解釈し、解説中の情報を図にトレースすると、こんな感じになった。

解説で定義されている日本の姿(画像:国土地理院の電子地形図<タイル>に文字と罫線を追記)

・・・うーん。これって普通に見てもこの時代の“日本の中心”は関西あたりに見えるが・・・

しかし、当時の『アトラス』の索引にそのように記載されていたのは事実だろうから、ここでの突っ込みはこれくらいにしておく。

というわけで、「日本中心のゼロポイント」をまとめてみよう。

「日本中心のゼロポイント」のポイント
  • 「日本中心のゼロポイント」の根拠は、“現在の日本国土内”に40ヶ所あまりあるゼロポイントのだいたい中心にあり、かつ太平洋および日本海から最も遠い内陸地点にあること
  • 「日本中心のゼロポイント」のもうひとつの根拠は、“江戸時代以前に刊行されたアメリカの権威ある地図帳の索引”に、この地の緯度経度が当時の日本の“ポリティカル・ユニット”として記載されていたこと
  • 「日本中心の標」と「日本中心の展望台」には、“日本の中心”の名を冠している理由が示されていな

というわけで、この場所も“日本の中心”の一つということで異論はないと思う。

今回も無事“日本の中心”に立つ(タッチする)ことができた!

終わりに

今回の最大の難関は、舗装されてない道路・・・ではなく「日本のポリティカル・ユニット」という言葉だった。

辞書やGoogleで調べてもよくわからない英語を、解説に持ち出さなくてもいいのではないだろうか? せっかくみんなこの地を楽しみに、理解したくて訪れているわけだし・・・ね。

評価

(5段階評価。★の数が増えるほど高い)

  • 到達難易度:★★★★
    幹線道路から目的地まで案内板が設置されているが、“日本の中心”を名乗る場所が3ヶ所もあるため混乱する。また、「日本中心の標」と「日本中心の展望台」に向かう未舗装路はミニバンクラスの車でも、ボディが道路脇の木の枝に接触するような悪路だ。「日本中心のゼロポイント」へのルートは手入れが行き届いている。公共交通機関でのアクセスには難あり。
  • 日本の中心度:★★★★
    現在の日本国土内のゼロポイントの中心であることは、ほぼ論理的であり理解できる。しかし、『アトラス』の記載についての説明はもう少しわかりやすくして欲しい。
  • 盛り上げ度:★★★★
    至近距離に、3ヶ所もの“日本の中心”を擁する国内有数の“日本の中心”それが辰野町だ。それらの資産を最大限に活用するためにも、それぞれの施設の関連性と違いをわかりやすく示せば満点。

「日本中心のゼロポイント」の近くにある「大城山展望台」からは、辰野町と伊那谷、天竜川を一望できる

アクセス

  • 日本中心のゼロポイント
    住所:長野県上伊那郡辰野町辰野
    公共交通機関:JR辰野駅から徒歩約120分
    車:長野自動車道・塩尻ICから約50分、岡谷ICから約50分、徒歩約30分

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