今後の店舗展開について
新しい工場を建設したことで、今後、新たな店舗の展開についてはどう考えているのだろうか?
「今、社内では『100店舗を目指そう』と話しているのですが、今の時代はなかなか人も集まりにくいですし、これまで最大で1年間に4店舗を出店したことがありますが、やはりスタッフにしわ寄せがいってしまいました」
「どういう体制作りをするのがベストなのかということを含めて、スタッフのみんなで相談しながら進めていきたいと思っています」とのことだ。
記事の前編で述べたが、かつてテンホウは山梨県に甲府店を出店し撤退したという経験を持つ。今後の、長野県外への出店についてはどう考えているのだろうか?
「甲府は、お話を頂ければやりたいなと思っています。これは、諏訪市にある工場の位置を考えると、飯田市や上田市、佐久方面に配送するよりも距離的に近いという理由からです」
「ただ、思いとしてはやはり長野県でナンバー1になりたいという気持ちがあります」と、大石さん。
「そう考えると、まだ上田市や佐久方面にはお店がありませんので前向きに考えたいし、飯田市はかつて出店しましたが、流通の面であまりにも効率が悪かったので、一度閉めさせていただいたという経緯があります」
「でも、今では辰野町にお店がありますので、ちょっとずつ南へ広げていきたいですね」とのことで・・・その後にこう続けた。
「ただ、これからは少子高齢化そして人口減少が加速していくので、お店を増やすことだけが幸せではないとも思います」
約20年前からの取り組み「三世代家族サービス」
そんな中、テンホウがコンセプトとして掲げるのは「三世代」だ。
テンホウでは20年近く前から、 三世代の家族がそろって食事した際に、祖父母に対して、食事券(300円分)を進呈するという取り組みを行っている。これはどんな思いではじめたことなのだろうか?
「当時、テンホウで働いてくれていたパートさんたちと、お店でどういう時にお客さんが喜んでくれるのか? そしてどんな時に働いていて楽しいと感じるか? ということを話し合ったんです」
「やっぱり、おじいちゃんやおばあちゃんがお孫さんと一緒にいる時は、みんな笑顔で楽しく食事してるんですよね。そういう時に、パートさんが子供用の器を持って行ったりすると、お客さんが『ありがとう!』と、明るく声をかけてくれて・・・そうするとお店の雰囲気まで明るくなるんですよ。やわらかくて優しい空気になる」と大石さん。
「そんないきさつもあって、これも初代社長の時代にはじまった取り組みです。だから、ただ食事をするだけでなく、“家族の団らん”を作りたいという思いがあります」と語る。
「つまり、我々としては『ご家庭の一部になりたい』のです。そういうことからも、三世代が満足できるメニューを提供したいし、その結果、商品数が増えていったという側面もあります」
「だから、テンホウはラーメン店ではなく、イメージとしては食堂に近くなってきています。少子高齢化や人口減少の問題を考えても、ラーメンに特化するよりは、そういう方向に進む方がいいのではないかと考えています」ということだ。
「お店の名前ですが、最初は『ぎょうざのテンホウ』でした。それが『ラーメンのテンホウ』になって、今では『みんなのテンホウ』と名乗っています」
「それは、我々だけが頑張ってきたのではなく、地域の皆さんにファンになってもらって、普段使いしてもらった結果だと思っているんです」と語ってくれた。
終わりに
テンホウの「てんつるくん」という“ツルのマスコットキャラクター”は、孝一郎おじいさんと百代おばあさんが諏訪市で創業し、テンホウの元ともなった温泉旅館「天宝 鶴の湯」に由来するそうだ。
このように自分たちの原点を忘れずに、社会の変化に適合して成長し続けてきた「みんなのテンホウ」
その“伝説”はとてもドラマチックだったが、常に生活に密着した“食”を追求してきたからこそ、お客さんからこれだけの支持を集めているのではないだろうか。
取材協力
- 株式会社テンホウ・フーズ
長野県諏訪市中洲5314-1
TEL:0266-58-1100
FAX:0266-58-5845 - 三澤先生記念文庫(長野県諏訪清陵高等学校・附属中学校)
- 諏訪力講座16 テンホウに見る諏訪力(Facebook)
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