お寺の墓地でミュージックスターマイン!?長野県長野市の「久保寺観音」

残したい“お祭りの文化”とは?

——今年のお祭りの賑わいはどうだったのですか?

結局、昼間はほとんど人が来ないし、午後になってもまばらでした。18:00ごろにはぼちぼちと・・・18:30過ぎには大勢来ましたね。そして、その後はもう身動きが取れないほどになりました。

でも、お賽銭は最盛期だったころ(1995<平成7>〜1996<平成8>年)の20分の1です。つまり、皆さんお祭りには来るけどお参りはしていないということなんです。

さまざまな催し物が続き花火が終わるまでは、お参りができなくなるという理由もありますが、夕方以前は人が全然来ないということなんですよね。

確かに昼間は人は少なかった

——本当は、花火を含めた催し物がはじまる前に来てもらって、ちゃんとお参りしてから楽しんで欲しい。それがお寺としての希望だったわけですよね?

そういうつもりだったけど、結局そうならなかったということです。だから、お寺としてはお参りの人を増やそうと思って花火をはじめたけれど、どっちかというと裏目に出ているという感じなんです。

——お祭りの宣伝はしているのですか?

今はしていません。花火がこちらが想定していたものと違った形で盛り上がってしまっているので・・・宣伝すると、どんどん人が増えてしまいますしね。

ここには駐車場もないし・・・もう限界に近い状況で、何か事故が起こったら中止するしかない。だから宣伝する訳にはいかないんです。

お寺は急斜面の上に建つ

——花火を撮影する熱心なカメラマンたちもたくさん来ていましたが、どう思われますか?

口コミで来るのはしょうがないと思います。そして、別にその人たちが警備の人たちとトラブルを起こしているわけでもないし。ただ花火を近くから見ているだけですしね。

でも、今後もし好き勝手に振る舞うようになるのなら、対応を考えなければいけないかもしれません。

——ちゃんと節度をもってマナーを守ってくれれば・・・ということですね。それにしてもなかなか複雑です

だからどうすればいいのか? ということの結論は出ないのですが、ここにこういうお寺があるということを知ってもらえると嬉しいです。

この界隈で、善光寺さんに次ぐ歴史あるお寺ですし、今でも平安時代の観音様をおまつりしているわけですから。

お寺がある安茂里地区にしても、古くからの住民は少なくなって新しい人たちがどんどん増えています。そして、ここがそういういわれを持つ観音様だということを知らない人も多い。

お祭りをきっかけに、お寺のことを知ってもらえるということなら「大変だけど・・・まぁいいか」と思えるんですけどね・・・

お寺の境内周辺はのんびりとした“里”の雰囲気をもつ

——ここのお祭りは江戸時代から続く由緒あるものだと伺いました。そんな中で、お祭りに来る人たちに何を伝えたいですか?

子供たちに「お祭りに来たことがある」という経験を、この寺が発信できればいいと思います。今では、学校の先生にしても子供のころにお祭りに行った経験が無い方も多いそうだから・・・

——え! そうなんですか? でも子供ってお祭りが好きで・・・とりわけ屋台が大好きなイメージがありますけど・・・

それは、経験しなければわからないものなのです。例えば屋台での買い物にしても・・・今、“テキ屋さん”はいろいろと問題にされてるから・・・警察が指導してくるわけです。

じゃあ、地元の小学生の親御さんたちで何かしようか? ってなるけど、そういうのは数年続くだけで恒久的に続けるのは難しい。

屋台みたいなものにしたって文化だと思います。値段は高いけどね(笑)。でも、ここのお祭りに来てくれるおでん屋さんは、1本200円で食べ応えもある。売れるんだなこれが(笑)

暑い日だと1500本くらいしか売れないけど、寒いと2000本以上は売れる。でも、それもまたお祭りには欠かせないものでしょ?

大きな音が響き渡る打ち上げ花火

——まったくその通りだと思います。・・・で、花火ですが、来年はどうするんですか?

・・・というより、やるしかないでしょう?(笑)。もうあたりまえになっていますしね。やれるとこまではやります。

終わりに

とにかくすごい花火だった。その理由は記事中に記載したとおりだ。

実は取材中に「テレビや新聞の取材も断っている」と言われた。理由は「宣伝したくないし、お祭り(というか花火)に来る人の数も限界に近い」ということだった。

しかし今回、ありがたいことにお話を聞かせて頂く機会を作っていただき、それをどのように活かせばいいのかと考えたが・・・結局、ありのままを記事にすることにした。

「子供たちに、“お祭りに来たことがある”という経験をして欲しい」と語る住職。

お話を聞いて思ったのは、伝統や祭事をこの先どのように繋げていくのかということ。

すでに、子供のころにお祭りに来た経験が無い大人が数多くいるということだ。そして、自分が住む場所の歴史を知る機会も無い。お祭りには欠かせない、かつて子供たちが大好きだった“テキ屋さん”も排除されつつある。では、どうすればいいのか?

「久保寺観音春まつり」は、200年近く続いてきた。そしてお寺に至っては約1200年続いている。しかし、このままの状況では「我々の時代」で、その文化は断絶してしまうかもしれない。それで本当にいいのだろうか?

「だからどうすればいいのか? ということの結論は出ない」と語っていた住職。そしてそれは正しい認識だと感じた。これから先は、誰もが試行錯誤するしかないのだ。

とりあえずだが、もしこの記事を読んで「来年のお祭りに行こう!」と思った方がいるのならお願いがある。少し早めに出かけて、まずはお参りをしてからお寺やその周辺を散策してみて欲しい。

そして、その上でお祭りの催し物の一つである“この土地で生まれた、すごい煙火たち”を楽しもうではないか!

お腹が減ったら屋台もある・・・まずはそこから!

この地で生まれた“煙火たち”をさらに詳しく知りたくなった

取材協力

  • 慶紫山正覚院月輪寺(久保寺観音)
    住所:長野県長野市安茂里630

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