限界集落にアーティストが集まる!?長野市・旧中条村「中条アートロケーション《場》」

なぜ旧・中条村を選んだ?

取材させて頂いたのは、「中条アートロケーション《場》」の代表である、金属造形作家の角居康宏(すみい・やすひろ)さんと、画家・絵師であるOZ(本名:山口佳祐<やまぐち・けいすけ>)さん。2人とも長野市在住のアーティストだ。

角居さん(右)とOZさん。大きな灰皿が工事現場感を醸し出す

——さっそくですが、なぜ中条なのでしょう? それほど特徴がある場所ではないと思うのですが・・・

角居さん:発想が逆なんですよ。特徴的な場所でないということは・・・つまり中条はある意味“白い”ということ。ここでぼくらが発信することで、新しい色(特徴)をつけることができるのではないか? と思ったんです。

——そもそもどんなきっかけで中条を知ったのですか?

角居さん:「中条アートロケーション《場》」のメンバーで、木工作家のコバヤシユウジさんが、中条に工房を持っていて、そこにはちょいちょい来ていたので、だいたいどんな場所なのかは知っていました。

床はきれいにコンクリートが塗られていた

角居さん:実は、OZさんと2人で、共同の工房を立ち上げようと思い、去年(2017<平成29>年)いろいろな場所を探していたんですよ。でも「ここだ!」というピンとくるところがなくて・・・ここは長野市が運営している「空き家バンク」に登録されていたんです。

この物件には家が2棟あるので、工房の他に住居を構えることができるし、スペースも広い・・・それなら、ぼくらだけではなく、もっといろいろな人を巻き込んだら、面白い場所を作れるんじゃないかと思ったんです。

天井を剥がして、梁がむき出しになっている

——角居さんは長野市田町の工房で制作されていますよね?

角居さん:はい。今もそうだし、だからこれからは2拠点ということになります。

——なぜ別の拠点を持とうと思ったんですか? OZさんどうでしょう?

OZさん:ぼくは県外に何年か出ていて、東日本大震災のあとに長野に戻ってきました。今は長野市の上松に住んでいています。そして制作活動を続ける中で、だんだん地域に貢献したり、地元で何かを発見したいということに興味が移っていきました。

ドアをスプレーで黒く塗るOZさん

OZさん:ちょうどそのころ、角居さんと初めてお会いして、だからといって常に連絡を取り合っていたわけではなく・・・各々がそれぞれのフィールドで制作していたという感じでした。で、ひょんなことから、角居さんに連絡した日があって、それがきっかけで「じゃあ2人で飲みながら話そうか?」ということになったんです。

そこで「お互いに制作スペースが手狭だね」という話になった・・・角居さんはストックルーム、つまり作品を保管する場所を必要としていて、ぼくは作る作品がどんどん大きくなってきていたので、今の自宅兼アトリエに限界を感じていたんです。そういうこともあって「じゃあ、ちょっと一緒に探してみようか?」ということになりました。

2階はおもに平面作品の制作スペースとなる予定

——お互いに、作品を作る上で別の場所を必要としていたということですね

OZさん:そうです。それで、ぼくも友人や知り合いに当てってみたりして・・・でも、自宅から通うことを考えると、長野市内からのアクセスが良くて、コミュニティーとして成り立つ可能性が高い場所がいいね。ということは話していて・・・角居さんは須坂の物件を見に行ったり、ぼくは信州新町をちょっと探したり、あとは長野市の大豆島なんかも見ましたね。

角居さん:それぞれのツテとか知り合いに当たっていったという感じです。

丸ノコを操る角居さん

OZさん:角居さんが「空き家バンク」で、この物件を発見したのが去年の10月末ぐらい。最初、角居さんが見て「なんか良さそうだ」ということで、次は、ぼくも一緒に見に行きました。

角居さん:ぼくの中で1つ鍵になっていることがあって・・・OZさんの娘さん(※OZさんには2歳になる娘さんがいる)も一緒に物件を見に行ったんですよ。古くて、暗くて、物もいっぱいあるごちゃごちゃとした環境の中で、娘さんは全然怖がらなくて寝ちゃったんですよね(笑)

——(笑)

角居さん:それで「あ、ここは安心できる場所だ」と思った。そういう気配みたいなものって大切なことのような気がして・・・

写真に小さく写るのは、OZさんの娘さん“みはるちゃん”

——でも、この場所は幹線道路がすぐそばを通ってるし、交通量もそれなりにある。もっと静かな場所を選ぶという選択肢はなかったのですか?

角居さん:別に隠居生活をするわけじゃないですから(笑)「山奥の静かなところで」っていうのは、ぼくらの中ではちょっと違っていて・・・

何かを発信するのなら、人が来やすい場所がいいし。それにここには、すぐ近くに家があって山があって川もある。そんな環境も良くてね。ものを作るということだけではなく、遊びの要素も考えた時に面白い場所だなと思った。

——目の前がすぐ土尻川ですもんね

角居さん:うん。川でバーベキューをやって、子供に水遊びをさせて、寒くなったらお風呂に入れて、寝かせて・・・全部事足りるんですよ。

目の前を流れる土尻川。この日は前日の雨で水が多く濁っていた

角居さん:結局、ぼくらはそういう環境で育ったのに、今ではそんな経験すら難しくなってる。子供たちが家の中でゲームばかりしているというのは、やっぱりつまらないと思うし、ここならダイナミックな遊びができると思うしね。そしてそれは、ぼくらも欲していることだと思う。だから、ただ山奥がいいということではないんですよ。

OZさん:ひとつテーマがあって・・・キーワードは「原風景」。だから、ぼくの娘の原風景は、もしかしたら住んでいる長野市の上松ではなく、この中条になるのかもしれない。それは娘次第ですけど。なんか、そういう子供に委ねるというか選択肢を与えるってことは、そろそろぼくらが考えてあげてもいいのかな? という気持ちにもなったんです。

——それがこのプロジェクトに「場」という名前をつけたひとつの理由なのですか?

角居さん:そういう「場」もあるし、物理用語としての「場」もあるじゃないですか? 磁場とか電場とか、その影響が及ぶ範囲のことを「場」といいますよね? そんなイメージもありますね。核として発信していく「場」なんです。

 

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