冷たくみずみずしいそばを堪能する
店内は、カウンター席とテーブル席、小上がり席がありなかなか広い。それでも、曜日やシーズンによっては、すべての席が埋まり、空きを待つことも珍しくない。
さて何を食べようか。実はすでに決まっているが・・・一応メニューをチェックしておこう。
美郷のメニューを大まかに分けると「冷たいそば」「温かいそば」「うどん類」「ご飯類」となる。オススメはなんといっても「ざるそば」だ。
「ざるそば」は、そばの量によって「大ざる(900円)」「ざる(700円)」「小ざる(500円)」を選ぶことができる。メニューには「大ざるはチョット量が多いのでご注意ください」と書かれており頼もしい(?)
「あれ!?『天ざる』はないの?」と思った方もいるかもしれない。実は、美郷の「ざるそば」は、天ぷら(山菜の天ぷらが1個)が標準装備だ。
「温かいそば」「うどん類」を選ぶ場合は、山菜、月見、かき揚げ天、かき揚げ天玉のうちから何を載せるか選べばいい。
しかし「ご飯類」の「カレーライス(500円)」が異彩を放っている。常連さん向き?
・・・もし、自分がこの地で働き、週に数回この店を訪れることができるとしたら「・・・『かけそば小(650円)』と組み合わせてみようか?」などと、想像するのも楽しい。
ということで、ここは思う存分にそばをたぐり、すすりたいので「大ざる」を注文。と、同時にお茶と漬物が出てくる。接客は極めてフレンドリーだ。
漬物とそば茶がじんわりとうまい。ホッとしたところで気がつく。テーブルの上には・・・
前述した通り、美郷で「ざるそば」を頼むと天ぷらがついてくるが、それに対する感想が書かれており興味深い。
「天ぷらは、くわのみと山ぶどうの葉。とっても美味しく頂けました」とか「初めてタンポポの葉を食しました」「天ぷらはアシタバだった」などと書いてある。
「・・・今日は何の天ぷらかな?」と、期待が膨らむ。
中山高原は美郷から車で約3分、徒歩で約10分ほどの場所にある風光明媚な観光スポットで、NHKの連続テレビ小説『おひさま』のロケ地になった場所だ。
春には菜の花が一面に広がり、背景にはまだ雪が残る北アルプスの山々を望むことができる。8月下旬〜9月中旬には、そばの白い花が咲き誇りやがて「新そば」季節を迎える。
「・・・新そばの季節にまた来たいなぁ」などと考えていると、
お店の方にお聞きすると天ぷらは「なずな」とのこと。春の七草でも有名なやつだ!(なずなとペンペン草が同じものだと、今回初めて知った。ちょっとショック)そして・・・
美郷のそばは二八で、長さや細さがバラバラなのが特徴。麺の中にそばの外殻がはっきり見えるが、色は白っぽく透明感も感じる。
・・・ふー。うまい・・・間違いない。
まず、きちんと冷たいそば。きれいな冷水を使ってキュッと締めてあるのがよくわかる、とてもみずみずしい。そばをすすると、ほのかに香りが立ち適度な甘みも感じる。コシは強く喉越しは爽快。
タレは辛めでコクがあり、こちらもちゃんと冷やしてあるので“冷たいそば”とベストマッチする。
「冷たいものは冷たく、熱いものは熱く」これって食べ物の基本。で、思うに、麺の細さや長さが異なることで、タレとそばの混じり具合が変化し、味にリズムを産んでいるようにも感じる。
なずなの天ぷらは実にそばと合う。個人的には、冷たいそばをたぐっていると、ちょっとでいいから天ぷらが食べたくなる。なので、美郷の「四季の山菜の天ぷら1個載せ」は、素晴らしい心づけだと信じて疑わない。
「大ざる」の量は「うまいそばを思う存分に食べたい!」という方にはうってつけ。筆者は“前のめり”に食べ続けたが、ゆっくり食べていたらちょっときつくなっていたかも・・・
ということで完食!「おいしいそばを堪能した」という充足感でいっぱいになる。
「そばのうすやき」は、そば粉をクレープ状に焼いたもので表面には甘みがある辛味噌が載せてある。食感はもちもちとしており、デザート的においしくいただいた。
そば湯は、ドロドロで濃くそばの風味が強い。さっぱりとしたみずみずしいそばを食べた後に飲むと、そのコントラストに思わず笑みがこみ上げる。
タレもまだたっぷり残っているので、そば湯も好きなだけ堪能することができる。うーん! 至れり尽くせり。
ごちそうさまでした!
終わりに
記事の冒頭に書いた“そばの原点”について。つまり、筆者のそれは美郷のそばということになる。
厳密に言うと、この土地で同じ作り方でそばを打ってくれた、祖母のそばのことになるが・・・
かつて、子供の頃に食べた一番おいしかったそば。そのそばを、今だにこうして食べることができるのは、とてつもなく幸せなことなのかもしれない。
店舗情報
- 店名:手打ちそば 美郷
- 住所:長野県大町市美麻新行14890
- 電話番号:0261-23-1334
- 営業時間:11:00〜17:00(冬季は16:00)
- 定休日:火曜日(祝祭日は営業)
- アクセス:長野自動車道 安曇野ICから約45分
JR長野駅からJR信濃大町駅・大町温泉郷・扇沢行き特急バスで約50分。バス停「新行」で下車
JR信濃大町駅からJR長野駅行き特急バスで約10分、バス停「新行」で下車 - 最寄駅:JR大糸線 稲尾駅から徒歩で約50分(3.6km)
- 駐車場:完備