アーティストの工房にカフェ「美場」が誕生!「中条アートロケーション《場》」次の野望とは?

オープンから1年経過した“場”と美場の開店について

建設現場ライクな灰皿の前で角居さんに問う!(ふたたび)

ーー“場”のオープンから、ちょうど1年後に美場がオープンしました。まずはおめでとうございます!

ありがとうございます! 今回も予定通りにオープンできるか・・・またもや最後はドタバタでしたけど(笑)

ーー(笑)。去年、“場”がオープンしてから、すぐにこの場所で製作するようになったんですか?

それが、環境が揃っていないこともあって、すぐに工房として使いはじめるまでには至りませんでした。建物を改修しつつ工房も整えて徐々にこの場所で製作するようになっていった感じです。

ーー窓にサッシを入れて、屋根のペンキも塗り直して・・・

それと建物の内壁も直しました。今は、金属を鋳造する(※溶かす)ことができる小屋を建てています。あとは、作品をストックするスペースを設置すれば製作場所としてほぼ完成となります。

かつてサッシが入っていなかった窓

それと平行して美場の準備も進めてきました。厨房は保健所の審査が必要で、条件に沿うように床を直さなきゃいけないとか・・・次々と直すべき箇所が見つかっていった(笑)

ーー(笑)。美場はどんな感じに運営していくんですか?

美場は、“場”のマネージャーを務めている石澤さんがオーナーとして取り仕切ることになりました。とても張り切っていますよ(笑)

ーーカフェはこれで完成なのでしょうか?

これで完成です。あとは、集客ですね・・・ネットをメインに情報発信をしていくつもりですが、この場所、つまり中条の“売り”をどうアピールしていくのか?・・・もちろん“場”は製作拠点であり、目的地として来てもらうためにはじめたわけなんですが、カフェの集客については考える余地があると思っています。

美場のフロアに立つ角居さん

ーー自然が美しい場所ですし、目の前の県道(長野県道31号長野大町線)には、自転車(ロードバイク)が結構走ってますよね。

走ってますね。だから、まずはサイクルスタンドを自作して設置しようと思っています。

ーー角居さんが作ったサイクルスタンド! それは貴重です。でも、いいかもしれませんね。県道沿いにはお店もあまりありませんし。

そうなんですよ。中条にはコンビニと道の駅くらいしかないのでいいと思うんですよね。道の駅でゆっくりできるかというとそうでもないですしね。

あと、目の前を流れる土尻川は浅瀬なんで、子供が安全に川遊びできるといいなと思います。少し整備して水遊びやバーベキューができるようになれば、すごく楽しいと思います。

“場”の目の前には緑豊かな土尻川が流れている

中条に滞在して製作してもらう

ーー工房に必要な設備もまもなく揃い、カフェも開店しました。“場”の形としては、これでほぼ完成ということになるんですか?

まだ、完成してないんです。あとは、2Fのアトリエスペースを整えます。というのも、工房とカフェが入るこの建物と左隣にある家(※角居さんの生活スペース)は僕の持ち物になったんですけど、さらに隣に大きな家を借りたんですよ。

ーーええ!・・・つまり3軒目ということですか?

はい(笑)。アーティストインレジデンス(※アーティストを一定期間招聘し、その土地に滞在してもらいながら作品の製作をしてもらう活動)のための宿泊施設として整備したいと思っています。そして、これから整える2Fのアトリエスペースで製作してもらうつもりです。

つまり、こういう並びになる予定

ーー大きな家ですね。

“場”の工房&カフェが入る建物よりも大きな家なんです。2Fには20畳ほどの大広間があって、その部屋を仕切るか仕切らないか・・・ドミトリー形式(※2段ベッドなどを配置した相部屋)にもできるし。中条に来たアーティストが滞在するスペースとして利用したいと思っています。

ーーそうしたら、民泊の許可も必要ですよね?

そうなんですよ(笑)。でも、いいニュースがあってフランスでアーティストインレジデンス活動を進める「ECHANGEUR22(※)」とパートナーシップを結ぶことになりました。

※ECHANGEUR22(エシャンジャー22)
フランスの南部、プロヴァンス地方のサン・ローラン・デ・アルブルにある16世紀の養蚕所を改装した歴史的建築物を拠点としてアーティストインレジデンス活動を進める団体。

韓国・大田広域市の「Sojae Creating Community | 蘇提創作村」と、 日本・長野市の「場」と提携し、ヨーロッパ・アジア間の文化交流と情報交換の拠点を築いている。
(出典:ECHANGEUR22のwebサイトより抜粋、筆者要約)

新たに借りたという家の軒先にはツバメが巣を作っていた。この建物がさまざまな国のアーティストの宿泊施設となる

つまり海外と、日本のアーティストを相互に受け入れる体制ができたということなんです。

ーーなるほど。海外で真摯に活動しているアーティストが“場”に滞在して製作するわけですね! とても楽しみです。

“場”は子供たちが見てもわかりやすい「仕事場」

ーー“場”がオープンして1年経ちました。中条という場所で活動してきたわけですが、何か思うところはありますか?

美場のプレオープン時に、中条小学校の校長先生と先生たちが来てくれて、「こんなにおもしろい場所があるのなら授業の一環で児童を連れてきたい」と言うので、どんどん連れてきてくださいと答えたんです。

ーーいいですね。たぶん、角居さんが製作している姿を見ているだけでもおもしろいと思います。

そうですよね! その時に先生たちとも話したのですが、昔は近所に鍛冶屋さんとか、指物屋さんがいたわけで・・・子供たちが、仕事場をのぞくとカンナをかけてますみたいな。そういう環境が当たり前だったんだけど、今は大人がどんな仕事をしているのかわからなくなってしまっているという現実があって・・・

ーー仕事がブラックボックス化してますよね。

角居さん工房。つまり“仕事場”だ

そうなんです。だから子供たちから見ると、大人は何をしてどのようにお金を稼いでいるのかがわからないという側面があります。

昔は、職人さんが仕事場でモノを作っているのを見て、子供たちもそれが大人が働く姿だという認識を持っていたと思うんです。それで「あ! これは僕にはできない」と思うからこそ、大人を尊敬することができたわけです。

そのうえで、その人なりのパーソナリティ・・・「夜になると、あのじいちゃんは飲んだくれになるんだよ!」みたいなこともわかる(笑)。かつては、そういう人間の多面的な要素が、子供たちにも理解できたと思うんです。でも、今は仕事が見えないからわからない。

ーーだから仕事場を見てもらうわけですね。

なんか、子供にちゃんと大人が働いてる姿とか、モノができていく過程を見てもらうことは結構重要なことだと思うんです。

そういう意味でも、中条の子供たちに近所のおじさんである僕が、ここで働いている姿を見てもらうのはいいことだと思うんですよね。もちろん、カフェに来てくれたお客さんの子供たちにも見せてあげたいです。

いらっしゃいませ。ようこそ美場へ!

終わりに

筆者の祖父は大工だった。そして、子供の頃に祖父の仕事場で触れた木のにおいをよく覚えている。それは今でも思い出すことができる素敵な経験だ。

アーティストの製作拠点としての“場”、コーヒーや食事を楽しめるスペースであるカフェ“美場”、海外から中条に滞在して作品を製作するアーティストインレジデンスとしての“場”、そして、子供たちが大人の仕事やお金の稼ぎ方を知ることができる“仕事場”、それが「中条アートロケーション《場》」ということだ。

ちょっと中条まで、おいしいコーヒーを飲みに出かけてみてはいかがだろう。

限界集落にてさまざま“場”として進化中!

アクセス

  • 中条アートロケーション 《場》併設カフェ 美場
    住所:長野県長野市中条4462
    最寄駅:JR長野駅からアルピコ交通バス「高府線」で約30分、バス停「大畠」を下車、徒歩約3分
    アクセス:上信越自動車道 長野ICから車で約30分
    駐車場:あり
    電話番号:026-267-2462
    中条アートロケーション 《場》FaceBook
    カフェ 美場-viva FaceBook

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