長野県山ノ内町「松美食堂」のカツ丼は“たまごとじ”にするか“ソース”にするかで悩まない

“ハイブリッド”なカツ丼とご対面

「ザ・大衆食堂」といったたたずまいの店内

お店に入ると店主が愛想良く「いらっしゃいませ!」と、お冷やを運んできてくれた。店内のお客さんは、おじさんが2人。どちらも昼間から、あじフライとビールで決めていらっしゃる。いいなぁ。

メニューの書かれた札がずらりと並ぶ

壁には長野オリンピック・パラリンピックのピンバッジが

天井付近には何やら顔写真入りの掲示物が。ははぁ・・・これだな

“デカ盛りメニュー”のカツカレー

ちょっと、メニューを書き起こしてみると・・・

カツカレー{BIGです!}
「ご飯の都合で出来ない時はごめんなさい(>_<)」
*普通サイズがBigです!
{ご飯は約2合、ロースカツ1枚、野菜。別にお味噌汁、お新香付き}
1200円
*大盛り1400円{ご飯は約4合になります}
完食されたら記念写真?(希望により!)

大盛りは、ご飯が・・・4合。はい? なるほど。これを食べきれば店内に記念写真が掲示されるわけか。

・・・しかしこのメニュー、カレーのルーの量について記載されていないのが気になる・・・デカ盛りになるのはご飯だけなのか・・・それだとかなり食べづらいかもしれない。

他のメニューも見てみよう。

ご飯もの、麺類、日本蕎麦、うどん

単品料理、ビール、サワー、ソフトドリンク、日本酒

種類はとても多彩だが、お酒やおつまみも豊富なのが特徴的。「やっぱり温泉街だからかな?」と思って、ふと壁を見てみると・・・

なるほど。夜は“飲み屋モード”になるようだ

夜九時過ぎのお食事メニューは、醤油ラーメンのみになります。
・中華そば、チャーシューメン、わかめ、山菜、もやしラーメン、おつまみ、単品料理は出来ます。
何卒よろしくお願い致します。
店主

とあった。さらにメニューを見ていくと・・・おじさんのビールのアテはこれか!

新メニュー!!アジフライ600円

あと気になったのは・・・

Fried chicken!!{唐揚げ500円}set menu{700円}・・・なぜ英語?

近くにある、地獄谷野猿公苑は外国人旅行客に大人気らしいし、このあたりにもインバウンドの影響があるのだろう。しかし、きっかけはなんであれ、日本の大衆食堂を訪れてくれるのは嬉しいことだ。

そして・・・

おすすめメニュー!(Recommended Menu)

松美食堂のおすすめメニューは以下の通りである。

カツ丼
*ソース味です
*卵でとじてあります
※お味噌汁、お新香付
750円

カツ重
*ソース味です
*特製ソースをかけてあります
*お味噌汁、お新香付
850円

中華そば(ラーメン)
*昔ながらのさっぱりとした醤油味です
600円
(※以下略)

これらの情報を元に考えると、カツ重は、いわゆるソースカツ丼に該当すると推察される。また、中華そばも看板メニューであることは、駐車場に貼ってあった案内からも明らかで気になる存在だ。

しかし・・・“ソース味にして卵でとじてある、50年来変わらない味のカツ丼”は、まさにハイブリッドであり、“たまごとじ”と“ソース”を合体させた究極のメニュー。これが、今回の大本命だ。

「これで長年の悩みも解消するのか?」

と、ドキドキするような心持ちでカツ丼を注文。到着をしばし待つ。そして・・・

完成!

「やはりカツ丼に“蓋”の存在は重要だよな」と思いつつ、オープン!

おお!

かすか鼻をくすぐるソースの香り。揚げたカツを、シンプルにたまごでとじたような出で立ちで、ソースの存在は見た目からはよくわからない。

味噌汁をクローズアップ。わかめと揚げが入っている

お新香。キュウリ、ダイコン、ハクサイの3点盛り

そして・・・

カツ丼。無骨なたたずまいである

というわけで・・・いただきます! まずは味噌汁を一口。手作り感あふれる食堂の味噌汁だ。

そして・・・

カツを一切れ箸に取り・・・パクリ

・・・たまごでとじてあるのにソースだ! 一番最初に感じるのは酸味がほどよく効いたソースの味。しかし、ソースカツ丼とは味も食感も異なる。カツはとても柔らかく、脂身もほとんど無い。うまい。

一般的な“たまごとじ”カツ丼の甘みは、タマネギによるものだと思うが、このカツ丼はそうではない。ソースそのものの甘みを最大限に活かしているように感じた。

なんだろう? 昭和の洋食テイストというか・・・ケチャップライスは、たまごをまとうとオムライスになるが、ソースが染みたライスに、たまごでとじたソース味のカツ。・・・これは食べたことの無い“レトロな洋食味”だ。

次にお新香をつまむ。あーこれは自家製だ。じんわりと優しい味。これで口の中がリフレッシュされる。3種類あるのも嬉しい。

たまごをまとったソース味のカツ

長野のソースカツ丼の特徴である“千切りキャベツ”は、この丼には存在しない。つまり、このカツ丼を構成する要素はあくまでも、たまご、カツ、ソース、ご飯のみ。

しかし、たまごというのは不思議な食材だと思う。醤油、ソース、ケチャップ・・・どんな調味料とも組み合わせることができる懐の広さがある。

というわけで、松美食堂の“ハイブリッドなカツ丼”は、“たまごとじ”とも“ソース”とも違う唯一無比のオリジナルなカツ丼で、とても美味しく頂いた。

ごちそうさま。

終わりに

結果的には“カツ丼どっちも好きで選べない問題”は解決しなかった・・・というか、さらに“新種”のカツ丼を発見することになり、選択の余地を広げてしまうという結果となった。

松美食堂のカツ丼は、50年もの歴史をもつということなので、もしかしたら「このカツ丼こそがオリジナル!」という人もいるのかもしれない。

たたずまいも素敵な食堂だった。こんどは中華そばを食べたい・・・

店舗情報

  • 松美食堂
    住所:長野県下高井郡山ノ内町大字佐野2580-22
    電話番号:0269-33-2276
    営業時間:11:30〜14:00、17:00〜22:30
    定休日:無休
    アクセス:上信越自動車道 信州中野ICから車で15分
    最寄駅:長野電鉄長野線 湯田中駅から徒歩15分
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