限界集落にアーティストが集まる!?長野市・旧中条村「中条アートロケーション《場》」

これからの時代を“面白く”生きるために

——どんなにいいものがあったとしても、そのことに気がついているのは実は外部の人間だったりしますよね? そういう意味で、中条という場所を選択したのはすごく面白いと思うんです

角居さん:ぼくはもともと金沢の人間で、そして金沢にいた時には、その良さが全然わからなかった。でも、長野に来てみると、長野の人は金沢を「いいところだ!」って褒めるんですよね。「そんなにいいところかな?」って・・・でも、こっちに来てみると金沢の良さがわかるんです。

住居スペースは片付けの真っ最中

角居さん:もともと外の人間だから、長野の良さは最初からわかる。そして、中条に来てみると中条の良さがわかるというか・・・ここの風景というのは、日本が捨ててきた「日本の原風景」だと思うんですよ。

「日本の原風景って何?」と問われれば、やはり「・・・山があって川があって(場合によっては)海もある」と、答える方が多いのではないでしょうか? つまりそれって「あなたの故郷って何?」って聞かれているのとほぼ同義ですよね?

でも、みんなそういう「原風景」を捨てて、都会で暮らしている。「では、あなたが考える日本の原風景って具体的にどこにあるの?」って問われた時に、困る方もいると思うんですけど、自信を持って「ここだよ!」って答えることができる場所が中条です。「みんなが捨ててきた日本が全部ここにあるよ!」「中条に来ればわかるよ」って。つまり、そういう場所なんですよ。

パソコンを置いたら集中できそうな部屋もある

——でも、今、ちょっと世の中の意識も変わってきている感じがします

角居さん:もう飽きてきてるんですよ。文明に。与えられるモノに。自分で新しい価値を探し始めているんだと思います。そして、自分で探すことになって「・・・何? どうすればいい?」ってよくわからなくなっているのではないでしょうか?

例えば海外に行って「私は日本から来た」と言う。その国の人に「日本には何がある? 日本の生活ってどうだ?」って聞かれて「うまく答えることができなかった」という方も多いと聞きます。

そして、自分のこととして振り返ってみると、都会のオフィスやマンションの一室で、パソコンに向かっていることが毎日の人生だということなら・・・それは飽きてきますよ。ネットの中に、面白い世界があるっていうのはわかりますが。

だけど、環境さえ変われば、自分の意識だって変わるし、広がるし、新しい価値も見つかるかもしれない。そういう視点があってもいいんじゃないですかね?

以前の住人の“ペナント”が張られた、昭和チックな部屋

——あるお寺の住職が「昔はお祭りの日にはものすごい人数が集まったけど、今ではどんどん人が少なくなっている」という話をしていて・・・

角居さん:お祭りが、かつては最大の娯楽だったんですよね。そして、娯楽が映画に変わり、テレビに変わって、今ではパソコンやらスマホに変わったわけです。

結局ぼくらって・・・ものを作り出す人間は、何も無いところからでも娯楽を作り出せるタイプの人間だと思うんですよね。で、そういう連中が集まれば面白いことが生まれる・・・はずなんです。だからこその中条っていうのもあるんですよ。そこにかけてみたいです。

・・・中条には何も無い。まあ、地元の人はそういうんですけどね(笑)

——でも、何も無いってことは、つまり“何色にも染まっていない”・・・ヴァージンってことですよね

一同:(笑)

角居さん:今、中条の地区住民が約1800人。65歳以上の高齢化率が52%・・・つまり限界集落です。行き止まりなんですよね。これをこのままにしておいたら、すごい勢いで人が減って、空き家や廃屋が増えて朽ち果てて行くと思うんですよ。

運び出された畳と襖。作品の材料として再利用する予定

——でも、すべての地区を今後も残していくことは不可能じゃないですか? そういう意味で言えば「まだ中条には可能性がある」と感じるのでしょうか?

角居さん:可能性はあると思います。都会にいるアーティストが、だんだん田舎に出ようとしている。ぼくの周辺でも、都会に疲れてきている人は多い。子供も生まれたし、でも自分が思う子供を育てる環境じゃないし・・・そういう人たちが結構いる。あと中条にアーティストが3人住めば、アートの里になっちゃうと思いますよ。別にそれで人口がそれほど増えるとは思いませんが。

でも、人口減少は日本全体の問題で、もはや、どうやって食い止める? とか、どうやって経済を上向きにさせるか? とかそういう方向性では解決できないと思う。もっと個人にシフトして、どういう風に人生をまっとうすればいいのか? ってことを、1回見つめ直すタイミングになってきているような気がして・・・だから、そういう意味では、ぼくらが成し得ることって結構あるかもしれないな? とは思います。

つまり「面白く生きる方法を探せばいいんじゃないの?」ということ。そこにもっていければ・・・なんとかなるような気がするんです。

——その1つの方法が「中条アートロケーション《場》」ということですね。今後の活動に期待しています

さまざまな顔を持つ《場》が、まもなくはじまる

終わりに

角居さんとOZさんから共に出てきた「原風景」という言葉が印象に残った。

「原風景」には『大辞林』によると2つの意味がある。1つは「原体験から生ずる様々なイメージのうち、風景の形をとっているもの」。もう1つは「変化する以前の懐しい風景」

「なんで中条なの?」という問いかけを繰り返す筆者に、腹を立てた方もいるかもしれない。でも、そう聞かずにはいられなかったのだ。それは、たまたまではあるが筆者の「原風景」がこの場所にあるから。

「中条アートロケーション《場》」が、この場所ではじめる“面白く生きる方法”に期待したいし、実際にその活動を見届けたいと思った。

もしかしたらこの取り組みが、いつの日か誰かの「原風景」になるのかもしれない。

※「中条アートロケーション《場》」は、2018(平成30)年5月5日にオープンしました。レポート記事はこちらから。

ありがとうございます。かっこいい親父たちでした!

取材協力

中条アートロケーション 《場》
長野県長野市中条4462
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