JR最高の路線とは!?
知人から「JRで“最強”の路線ってどこか知ってる?」と聞かれたことがある。
ふむ。やはり利用者数が膨大な、日本の大動脈たる東京と大阪を繋ぐ東海道新幹線か。はたまた東京都心をぐるりと1周する環状線の山手線か。などと考えていると・・・
「答えは埼京線でした! 理由は最強=埼京だから(笑)」と言われた。・・・なぞなぞかよ。この埼玉県民め!
しかし、埼京線が“最強”を名乗るのならば長野県には“最高”がある。それはここ!
JR鉄道最高地点とは、文字通り日本全国にその路線網を擁するJR線で最も標高の高い地点だ。その場所は、長野県南佐久郡南牧村にある。
JR小海線は、山梨県北杜市の小淵沢駅から長野県小諸市の小諸駅を結ぶ路線で、「八ヶ岳高原線」の愛称を持つ。その名の通り、八ヶ岳山麓や野辺山高原を通過し千曲川の上流部に沿って佐久盆地へと至る路線だ。
JR小海線は、標高が1,000メートルを超える高所を走る区間を有する路線であり、山梨県の清里駅と長野県の野辺山駅の間に、そのピークとなる標高1,375メートルのJR鉄道最高地点がある。
それでは、標高1,375mという高さをちょっと想像してみよう。
電波塔として世界一の高さを誇る「東京スカイツリー」(※2019年現在)が634mなので、スカイツリーを2つ重ねた高さよりも100mほど上空を走る路線であると考えると、その高さが想像しやすいかもしれない。
・・・想像しにくいか。ともあれそのくらいの高さ。
境内(?)には、蒸気機関車の車輪がある。そして、よく見るとレール、そして枕木にレールを固定する犬釘も祀られている。しかし、なんだろうこれ?
近くにあった看板に書かれていた解説を要約すると・・・
・ご神体はレール、神社のシンボルは車輪
・標高の1,375mは「ひとみなこうふく(人皆幸福)」「ひとみなごうかく(人皆合格)」と読める
・これらの理由から、日々の暮らしの中で最高地点を目指して頂きたいと祈願し、この地に神社を建立した
とのことだ。なるほど・・・(しかし、ここでもまさかの語呂合わせが)
ちなみに、最寄りの野辺山駅の標高は1,345メートルで、JR線の最高地点に設置されている駅だ。つまりこちらは“最高駅”ということになる(余談だが「さいこうえき=最高益」と語呂合わせして、こちらにも商売繁盛の神社を建立してもいいのかもしれない)
そして、駅に隣接する「銀河公園」には・・・
読んでみると、なかなか波瀾万丈な歴史があって味わい深い。
・戦後の混乱期である1950(昭和25)年8月から、客貨混合列車として小海線を走る
・1958(昭和33)年4月から松本、上諏訪、長野の機関区に順次配属され活躍
・1971(昭和46)年8月に廃車
・1983(昭和58)年8月から野辺山高原にて「高原列車SLホテル」として利用される
・1988(昭和63)年3月に老朽化に伴いSLホテルを廃業
・1989(平成元)年9月にこの地へと移転。永久保存されることになった
つまり、戦後から高度成長期の信州を駆け抜け、今では“最高駅”に隣接した場所で保存されるこの車両=高原のポニーも、“最高の蒸気機関車”ということになるだろう。もしかしたら、これもまた最高の余生なのかもしれない。
終わりに
“最高駅”である野辺山駅の近くには牛乳工場がある。長野県ではおなじみの「八ヶ岳野辺山高原牛乳」(というより「シュッポッポ牛乳」という愛称の方が有名かもしれない)で知られる株式会社ヤツレンの工場だ。
「シュッポッポ牛乳」は、1975(昭和50)年から販売されている、長野県民に広く親しまれているロングセラー商品。野辺山周辺の酪農家が生産した生乳のみをを使用した牛乳だ。
このパッケージを見るだけで、現在の小海線やかつてこの路線を走った蒸気機関車がいかに愛されていたのかを想像できるというものだ。
工場には直売所もあるので、JR小海線の“最高めぐり”に出かけた際には、立ち寄ってみてはいかがだろう。